憎悪煽るSNSに中国の影 反ユダヤ主義の深層(下)世界反ユダヤ主義政策研究所所長 チャールズ・スモール氏

――中国の企業が所有する動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」が反ユダヤ主義的なコンテンツを広めるために利用されていると指摘される。中国共産党がこれに関与している可能性についてどう考えるか。

ソーシャルメディアは間違いなく反ユダヤ主義を増幅させている。イスラエルとユダヤ人に関する肯定的な動画が数本しかないのに対し、反ユダヤ、反イスラエル的な動画は400本もあるという調査結果がある。だから、そこで何らかの問題が起きているということだ。

ハマス憲法にナチスの影響 反ユダヤ主義の深層(中)世界反ユダヤ主義政策研究所所長 チャールズ・スモール氏

さらに注目すべきは、英ガーディアン紙のウェブサイトに掲載されていた国際テロ組織アルカイダの初代指導者ウサマ・ビンラディンによる「アメリカへの手紙」(2002年に初めて公表されたもので、米国人やユダヤ人に対する暴力を呼び掛けている)が最近、ティックトックで爆発的に拡散したことだ。非常に反ユダヤ、反米、反西洋的な内容であるにもかかわらず、欧米などで多くの人がビンラディンを預言者のように扱い、その手紙を引用して投稿した。

これはティックトックが憎悪を煽(あお)り、西洋の結束を弱めるために悪用されていることを示している。ティックトックで拡散されたビンラディンの手紙は、人々をテロ行為やイスラム過激派に近づけるだろう。

これは、アルゴリズムによるものなのか、それとも中国が反ユダヤ主義に関する国際的な言説に介入しているからなのかは分からない。だが、これは恐るべきことであり、深刻な問題だ。

――反ユダヤ主義が社会全体に及ぼす悪影響は。

ノーベル平和賞受賞者でホロコーストの生存者であった故エリ・ヴィーゼル氏は常々、「反ユダヤ主義は反ユダヤ人から始まるが、その憎悪には境界がない」と述べていた。決してユダヤ人だけで終わることはなく、他の人々にも襲い掛かるのだ。

ホロコースト記念日に米議会で スピーチするノーベル平和賞受 賞者エリ・ヴィーゼル氏 = 2011 年5月17日(UPI)

彼らはユダヤ人への攻撃にとどまらず、他の宗教的少数派を攻撃し、女性を服従させ、自らに賛同しない他のイスラム教徒を敵と見なし、攻撃・殺害する。

また、反ユダヤ主義が米国の一流大学で基本的な価値観になった時、われわれが今、目の当たりにしているように、キャンパスで異なる意見を持つ人々が脅迫や暴行を受け、路上での暴力が起きる。

反ユダヤ主義は、民主主義の原則の弱体化を図る勢力によって利用されている。欧米の各都市で、反ユダヤファシストであるハマスを擁護するデモ行進を行い、人や財産に損害を与えたりする人々がいるが、信じられないことだ。

――現代社会における反ユダヤ主義に対抗するための効果的な戦略とは何か。

すでに述べたように、われわれの調査で分かったことは、反ユダヤ主義の原因の一つは、大学がカタールから数十億㌦もの資金を得ていることだ。これがカリキュラムや出版物、知的言説に影響を及ぼしている。

社会はこれまで、反ユダヤ主義の「症状」に対処してきたが、われわれの研究所はその「原因」を特定した。大学は世界中の罪のないユダヤ人の殺害を唱える人々から資金を受けるのをやめる時だ。

米国では、大学が外国の団体から2万㌦以上の資金を受け取った場合、教育省か国税庁に申告しなければならないが、反民主主義的な国から受け取る多くの資金が公表されていない。これは違法だ。

米政府が既存の法律に基づいて大学に罰則を科す必要がある。ユダヤ人の学生や教職員にとって、キャンパス内の環境は非常に厳しくなっている。多くのユダヤ人学生が暴力的な環境のために授業に出られなくなり、実際に学校を去る者も出ている。これは直ちに止めなければならない。

(聞き手=ワシントン・山崎洋介)

spot_img