今夏から始まった東京電力福島第1原子力発電所の処理水海洋放出。一時韓国内で起きた反対論の不当さをいち早く指摘した一人が李炳昤・前韓国原子力安全委員会委員だ。李氏は原子力分野でも日本と韓国は協力すべきだと主張する。その真意を語ってもらった。(聞き手=ソウル・上田勇実)
原子力分野に長く携わってきた立場から言いたいのは、原子力でも韓国と日本は互いに協力すべきものが多いということだ。これまで韓国は日本と何か協力しようとすると、簡単に言い出せない面があったが、私は尹錫悦政権が発足してから発展的に韓日関係を考えるようになり、勇気を出すべきだと思うようになった。
まず韓日間で「韓日原子力共同発展委員会」のような組織をつくってみてはどうかと思っている。原子力発電所の安全研究を共同で行うことが非常に望ましいからだ。原発の安全は両国にとって絶対無視できないものなので、互いに協力する方向で委員会設置をアプローチできる。
日本は技術水準が非常に高く、原発事故の教訓もあるため、韓国としてはそういう部分をシェアできればいいと思う。それは、韓国が日本と原子力分野で協力しようとする際にも説得力を持つ。
一方、韓国には原発輸出の実績がある。
世界の趨勢(すうせい)を見ると、米国は大手メーカーのウエスチングハウスが社会から姿を消したも同然で、名前だけが残り、カナダのファンド会社の所有になっている。フランスもベルギーと原発建設の契約を交わしたが、二十数年かかってようやく竣工(しゅんこう)し、これを巡って訴訟が起きた。ドイツはしばらく前に原発がなくなり、英国もない。残っているのは中国とロシアだ。
英国が原発建設を推進した際、中国が英国に原発を売ろうと、英電力会社の株式を大量に買うなどして影響力を及ぼそうとした。だが、英国はこれを拒否し、その後、文在寅政権時に英国が韓国を優先交渉対象に指定した。
ところが、文政権は脱原発路線だったので、政府に原発輸出は望ましくないと見なされてしまうため、誰も協力しなかった。それで英国は諦めた。その後、最近の情報によれば、英国がまた韓国に接触しようと準備しているという。
韓国の強みは輸出だ。UAE(アラブ首長国連邦)に輸出したのは10年以上前のこと。その後も2、3件承認されているので原発輸出の経験がある。また海外営業する上でも韓国人は押しが強い。
韓日関係には不幸な歴史もあり、韓国人にとっては忘れられないものだが、だからといってそれが足枷(あしかせ)になり続けるわけにはいかない。足枷になることで韓日関係がぎくしゃくするのはメリットにならない。