<前回>日台韓で世界平和モデルを 元台湾副総統・呂秀蓮氏インタビュー(上)
――来日した目的は。
下関条約(日清講和条約、1895年)を記念するフォーラムを来年4月17日に開催したいからだ。中国政府はたびたび、世界に対して台湾を「一体不可分な領土」と主張しているが、これは大きな間違いだ。
下関条約締結の際、清国は台湾を日本に「永遠に割譲」した。手放したにもかかわらず、台湾人を「台独」(台湾独立志向)だと非難するのはおかしい。
そこで、平等、善意、相互利益を基本とした民間団体「ウィンウィンウィン日韓台」を来年2月ごろに成立させたい。その後、4月に日清講和条約が結ばれた山口県下関市の料亭・春帆楼で「下関条約129周年フォーラム」の開催を目指す。
フォーラムの狙いは①日台韓が運命共同体であることを示す②中国政府が台湾は一体不可分の領土だと主張させないようにする――ことにある。台湾と中国は100年以上前に袂(たもと)を分かったという事実を直視すべきだ。
フォーラム前に東京で日台韓の専門家らを招待して、まずは今までの100年を振り返る。そして、これからの東アジアを未来志向でどう発展させていくか検討したい。
私の主張や理念について「実現できるはずがない」と言う人もいるでしょう。しかし、政治家は選挙で選ばれるものだ。人々の考えが変われば、政治は必ず変わる。
――来年1月13日に行われる台湾総統選をどう見ているか。
出馬を表明している非与党の候補者3人を見ると、政治家としての魅力が足りない。最大野党・国民党の侯友宜・新北市長は警察官僚出身。第3党の柯文哲・元台北市長は医者出身。もう一人は実業家の郭台銘氏で、いずれも政治とはあまり関係のない分野で生きてきた。統一候補を擁立するように動いているが、協力関係を築けるかどうかは不透明だ。
現副総統の頼清徳氏は、経歴的に最も総統に近いだろう。立法委員(国会議員に相当)や台南市長、行政院長、副総統などを歴任した。日本との関係も良い。ただ、新型コロナウイルスや鶏卵不足時の対応など、この約7年半の民進党政権の政策は決して完璧ではなかった。それが野党に攻撃される材料となってしまった。
――フォーラムの理念の中で、女性の役割の重要性を強調していたが、男女平等についてどのように捉えているか。
人は生来、平等ではない。平等なのは1日24時間であることと、地位や性別にかかわらず1票であるということぐらいだろう。本当の平等というのは難しい。ただ、性別を理由に役割を決定したり、女性だからとやりたいことを制限されるのは良くない。
蔡英文氏は総統に、私は副総統になった。女性がリーダーとなったことは歴史に残ることではあるが、台湾は真の男女平等にはなっていない。
今回の総統候補は全員が男性だ。彼らは女性の副総統を探せば男女平等だと考えているようだ。総統も副総統も国の指導者だ。総統に何かあれば、副総統が代わりに業務を行うのだから、副総統候補者の能力に焦点を当てるべきだろう。なぜ性別が女性であることが副総統候補の条件なのか。形だけの男女平等となっていないか。
今では、女性でも総統や宇宙飛行士、医者にもなれる。イスラエルの女性も国を守るために、武器を持って立ち上がった。厳しい訓練を経て国を守っていることに敬意を表する。ただ、女性には平和を守る役割がある。歴史上の大抵の戦争は男性が起こしてきた。今までは、男性中心の歴史と言えるだろう。女性が力を発揮して、男性と力を合わせて「人の歴史」をこれからは作るべきだ。