温暖化と闘う基地式捕鯨 地元と密着 地域興しに貢献 日本小型捕鯨協会会長 貝 良文氏

2019年から再開された日本の商業捕鯨は、大型クジラを捕獲する母船式と小型を対象とする基地式がある。そのうち沿岸での日帰り操業が基本の基地式捕鯨は地球温暖化による海水温の上昇と闘っている。和歌山県の太地町漁協専務理事、日本小型捕鯨協会会長の貝良文氏に、基地式捕鯨の現状について聞いた。

(聞き手=特別編集委員・藤橋 進)

――小型(基地式)捕鯨は今、どのような体制で行われているのか。

IWC(国際捕鯨委員会)の商業捕鯨モラトリアム(一時停止)以前は全国で9隻あったが、共倒れを避けるために減船し、今は宮城県の鮎川、千葉県外房の和田そしてここ太地を拠点とする全部で4隻で操業している。9月から10月にかけては北海道・釧路港を拠点に共同操業を行った。

ミンククジラが対象で、沿岸から50マイル(約80㌔)の範囲で日帰り操業をしている。小型捕鯨協会全体で年108頭の漁獲枠が定められている。これはIWCの計算式を基に日本独自で設定したもので、100年クジラを捕り続けても資源量は維持できるというものだ。

かい・よしふみ 1959年、和歌山県太地町生まれ。父親は漁師で後に商船の船員として勤務。81年から太地町漁業協同組合に勤め、現在同専務理事。2017年7月から日本小型捕鯨協会会長を務める。

――最近の資源状態や実績は。

モラトリアムの間、ミンククジラは沿岸にたくさんいた。それが捕れなくなってきている。昨年は107頭の漁獲枠のところ58頭しか捕れなかった。資源が減ったわけではなく、海水温の上昇でクジラが北の海域に移動したためだ。これまでミンクが捕れていた水温16度の海域が今は22度。6度も水温が上がっている。

それから黒潮大蛇行も影響している。潮目に集まるプランクトンや魚を餌にクジラも寄ってくるが、それが大きく沖に移動している。今年の捕獲実績は昨年ほど悪くはないが、母船式と比べても基地式は水温上昇や黒潮大蛇行の影響が大きい。

――小型捕鯨の利点は何か。

捕獲対象のミンククジラは、味に癖がないので消費者に好まれる。さらに母船式では、捕獲されたクジラは冷凍されるが、沿岸小型捕鯨は生で市場に卸すことができる。これが大きな利点だ。

――温暖化の傾向は今後も続くと思われるが、そういう中で、どういう対策を考えているか。

共同操業の期間を設け、クジラの発見と捕獲をより効率的にし、解体場所も共同で北海道の釧路1カ所にして経費を削減している。一方で共同操業は、操業海域が限定されるデメリットもあるので、単独操業の期間、海域を広げることで対処していく。

――いろいろ課題がある中で、基地式の小型捕鯨を行う意義は何か。

基地式捕鯨は、その地元の地域に根付いている。北海道の釧路など、地元の人たちが、クジラの上がるのを待っている。年に3回ほどイベントも開かれている。太地にもクジラ肉を送っているが、みな喜んでくれる。地元と密着し、地域興しにも重要な役割を担っている。日本の捕鯨文化の中核を成していると思う。

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