【宗教と政治】非公開審理で解散命令―「司法公開」に反する恐れ  元武蔵野女子大学教授 杉原誠四郎

懸念される「法の支配」崩壊

宗教法人の解散命令は裁判所が行うことになっており、その審理は非公開で行うことになっている。

とすると、解散命令が出てそれに抗告して、最高裁に至るとしても、非公開の審理によって解散命令が決定することになる。

インタビューに応じる国際歴史論戦研究所の杉原誠四郎会長

これでは法の支配、法治主義の下、司法公開の原則に反する。また、当該宗教法人は憲法第32条に定める裁判を受ける権利を与えられないままに解散させられることになる。

以上のことを総合すると、宗教法人法第81条に定める裁判所による解散命令は、宗教法人が刑事犯罪を犯し、解散理由が事実上、公開されている場合に限られるということになる。

 岸田文雄首相が解散命令の理由に民事も含まれるとしたのは、一般には認められる判断だが、宗教法人法第81条の精神に反しているということになる。(宗教法人法第81条の精神は、もともと容易に解散命令を出せないようにするためのものである)

 これを修復させるためには、もし地方裁判所が解散命令を決定するとした場合は、「不服ならば本訴(正式の裁判)を起こすよう」付言しておくか、当該宗教法人が第81条を使って抗告するのではなく、憲法第32条を使って地方裁判所に正規に訴訟を起こす方法があると思われる。

このような対処の仕方をしなければ、日本国民から見て、文部科学省(文化庁)はどのような質問をし、旧統一教会はどの質問にどのように答え、どの質問にはどのような理由で回答を拒否したのか、裁判所の審理で何が争点となってどのような論議がなされたのか、そのようなことを全く知ることができないままに、この一宗教法人の解散命令が出ることになってしまう。これは重大な問題だ。

一方、民主主義にして法の支配の下、財産権の自由は金科玉条だ。その観点から見ると、信仰をしている時に行った寄付につき、信仰を失った時点で返還を求めることは本来できないことだと考えなければならないはずだ。ただ、寄付を勧誘する際に不当な行為がある場合はその不当な行為に相当する部分は返還を求めるか賠償を求めることはできると思う。

そこで、家族の養育費に相当するところまで含んで高額な寄付をした場合、従来はそれも財産権の自由な行使として扱われていたが、昨年末、成立したいわゆる被害者救済法(「法人等による寄付の不当な勧誘の防止等に関する法律」)によって、養育費に相当する部分は返還を求めることができるようになったといえる。

ただし、これも法の支配の下、不遡及の原則で、この法律の施行以後に起きた案件に対してしか適用できない。このことから援用していえば、被害者救済法で規定された、違法ということになった勧誘に関するさまざまな行為も、適用はこの法律の施行以後になされるものであって、さかのぼっては適用できない。ということは、被害者救済法で違法となった勧誘に関する行為は、この法律の施行以前の案件であれば、原則的に返還や賠償を求めることはできないものということになる。

従って、高額な寄付による「被害」というのは、真実には、返還すべき返還金とか、賠償すべき賠償金のことであり、いま通常に言われている被害のうち、極めて限定されたものだと思われる。

<編集注>政府の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令請求と関連し、元武蔵野女子大学教授の杉原誠四郎氏は、無差別大量殺人を犯したオウム真理教や代表役員らが詐欺罪で有罪判決を受けた明覚寺のように解散理由が明確でないため、司法公開の原則や不遡及の原則に反し、「法の支配」崩壊につながる恐れがあると懸念を示した。
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