新興宗教に不寛容な日本社会【宗教と政治】イタリア宗教社会学者 マッシモ・イントロヴィニエ氏に聞く(下)

旧統一教会 解散請求

解散請求なら「2世」を苦境に

――旧統一教会の家庭は「宗教2世」に信仰を押し付けて虐待していると批判されているが、どう見る。

2世が親と異なる価値観を持つというのは、現代社会における普遍的な問題だ。子供たちがトラウマを持たずに生きていけるようにすることは、すべての宗教が抱える問題であり、旧統一教会特有の現象ではない。にもかかわらず、旧統一教会だけが批判されるのは極めて不公平だ。

例えば、西欧ではイスラム系移民家庭で親の宗教に反抗した子供が親に殺される事件が幾つか起きている。イタリアでは、イスラム教を捨ててカトリック教徒の青年との結婚を望んだパキスタン人の少女が両親に殺され、庭に埋められた遺体が発見されるという事件もあった。両親が敬虔(けいけん)なカトリック教徒でも、両親が反対する同性婚を望む若者も大勢いる。

日本のメディアは小川さゆりさんのケースに注目したが、社会学者の立場からすれば、重要なのは一つの事例ではなく、統計的にひどくネガティブな経験をしている人がどれだけいるかだ。多くの旧統一教会2世が良い経験をしているにもかかわらず、政府やメディアはこの事実を無視している。

――解散請求は旧統一教会2世たちにどのような影響を及ぼすか。

解散請求は2世にとって何の助けにもならない。それどころか、反社会的勢力の一員であるというスティグマ(負のレッテル)を背負わされ、彼らの状況はさらに悪化するだろう。

(聞き手=早川俊行、桑原孝仁)

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