<前回>中露と同じ宗教弾圧 旧統一教会解散請求【宗教と政治】イタリアの宗教社会学者 マッシモ・イントロヴィニエ氏に聞く(上)
――日本共産党をはじめとする左派勢力は、共産主義に強く反対する世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を敵視してきた。
日本共産党・旧社会党と全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の間には、深いつながりがあることが分かっている。旧統一教会たたきの政治的ルーツに日本共産党の関与があることは、欧米ではほとんど知られていなかった。全国弁連の実態を追及したジャーナリスト・福田ますみ氏の記事の英訳を私が編集長を務めるオンライン雑誌「ビター・ウィンター」に掲載したことで、欧米の宗教学者たちの間で理解されるようになった。
日本における反統一教会キャンペーンは、中国共産党による「邪教」に対するキャンペーンと酷似している。日本共産党と中国共産党の戦略がいかに似ているか、改めて思い知らされる。唯一の違いは、世界中が中国共産党の宗教抑圧を批判しているのに対し、日本共産党が同じ戦術を用いていることに気付く人が世界にほとんどいないことだ。
――日本人は神道や仏教などの伝統的宗教には寛容だが、新興宗教には否定的感情が強い。日本人の宗教に対する理解や感性は他の国々と比べてどうか。
この問題は昨年12月にローマで開催された会議でも議論されたが、日本に長期滞在した専門家は皆、日本は新興宗教に全く寛容ではないと認識している。新興宗教にある程度寛容になったのは、米国が戦後押し付けた憲法で信教の自由が保障されてからだ。
第1次世界大戦と第2次世界大戦の間に創設された創価学会は、反体制運動と見なされ、創始者の牧口常三郎は獄死し、後継者の戸田城聖も投獄された。仏教であっても新たな団体は迫害を受けた。神道系の大本教も同じだ。
キリスト教も日本の伝統的価値観に反すると見なされて迫害された。これは17世紀だけでなく、19世紀にもキリスト教徒が魔女として処刑された例がある。日本の文化には、伝統的宗教から外れているように見える団体に対する寛容性は存在しなかったのだ。
新興宗教の発展が許された第2次世界大戦直後を一部の米専門家は「神々のラッシュアワー」と呼んでいるが、これは米国が日本に信教の自由を課したことによるものだ。
だが、その後、新興宗教を疑う古い姿勢が徐々に復活していき、残念なことにオウム真理教の事件でそれが一気に広がってしまった。オウム真理教は他の宗教を代表しているわけではないにもかかわらず、メディアや世論にはこれを一括(くく)りにする傾向がある。
――解散請求は信教の自由に深刻な悪影響を及ぼす可能性が高いが、日本の宗教界から反対の声はほとんど聞かれない。
日本には、米国の「国際宗教自由円卓会議」のような信教の自由を守るための宗教間組織が存在しない。神学的には激しく対立しても、信教の自由を守るために団結するのは、19世紀から続く米国の伝統だ。同様の組織はイギリスやイタリアなどでも設立されている。ある宗教に起きたことは他の宗教にも起こり得ることから、宗教は協力すべきだという考え方が日本には根付いていない。