日本の核保有は米国の利益 復刻 米コラムニスト チャールズ・クラウトハマー氏(上) 【連載】核恫喝時代―識者インタビュー(7)

米国で最も影響力のあるコラムニストと言われた故チャールズ・クラウトハマー氏は、2006年に日本の核保有を支持するコラムを執筆し注目を集めた。同氏の主張は今なお多くの示唆に富むことから、本紙が07年1月に掲載した同氏のインタビュー記事を再掲する。
Charles Krauthammer 1950年、ニューヨーク生まれ。80年の米大統領選でモンデール副大統領のスピーチライターを務める。85年から米紙ワシントン・ポストでコラム執筆を始め、本紙を含め国内外の400紙以上が同氏のコラムを掲載。87年、ピュリツァー賞受賞(評論部門)。FOXニュースのコメンテーターとしても活躍した。2018年に他界。

――日本が核を保有すべきだと考えるその理由は。

理由は二つある。第一は、世界が「超核拡散時代」に突入しつつあることだ。過去50年間、われわれは核保有国を制限することができた。今後10年、20年はこの体制を維持できるかもしれない。だが、核兵器の製造情報は拡散しており、核保有国を制限することが困難な時代になりつつある。これは誰も望んでいない事態だが、止められないのだ。

北朝鮮のように経済が破綻し、国民を餓死させる孤立した弱小国家でも、厳しいペナルティーを受けることなく、核兵器を製造し、実験できる時代に、一体どうやってイランやアラブ諸国の核保有を阻止するのか。

パキスタンもインドも核を持っている。イランも保有するだろう。そんな国際情勢の中で、日本が核兵器を持たないのは明らかに不自然である。日本の非核政策は、第2次世界大戦での経験や戦後の平和主義からきているが、もう時代錯誤だ。日本も核保有が避けられない時代なのだ。

第二は、日本が米国にとって世界で最も信頼できる同盟国の一つであることだ。特にここ5~7年の間に日米同盟は非常に強化された。しかし、多くの米国人は中東に関心を奪われ、このことに気付いていない。

ポスト冷戦時代の構造が明らかになりつつあるが、中国とロシアは冷戦時代ほどではないものの、依然、米国に非友好的な国だ。そんな中国とロシア、さらに北朝鮮が核兵器を保有する一方で、友好国の日本が核を持たないというのは、米国にとってまったく有意義ではない。

米国が日本の核武装に反対するのは合理的でないと思うのはこれらの理由からだ。ただ、これはわれわれが決めることではない。日本自身が決めることだ。

私は個人的に、日本が核武装の道を選ぶことを願っている。米国にはそれほど多くの友好国があるわけではない。その友好国が自主防衛力を備えることは米国にとって好ましいことだ。

――米国内には日本の核武装に否定的な意見も少なくないが。

米国の国益の観点から、日本の核武装に反対する意見があることは、私も理解している。核を持たない日本は米国と同盟を結び、核の傘に依存せざるを得ない立場にある。だが、もし、日本が核を保有すれば、米国から独立し、他国と同盟を結んで米国と対立することも考えられる。また、1930~40年代の歴史的経緯から、日本の核武装は危険だと考える人もいるだろう。

しかし、私は、日本が核武装してもその地政学的位置故に、米国の同盟国としてとどまると確信している。むしろ、日本の核保有は同盟国としての価値を高め、太平洋地域の脅威を抑止する上で有益だと考える。

――日本では核論議の必要性を主張した一部の政治家が、左派勢力から猛反発を浴びた。政治家や政府高官が自由な核論議ができない現状は、「非核三原則」に「論議せず」を加えて「非核四原則」と呼ばれている。この日本の状況をどう見るか。

クレージーだ。日本は民主主義国家だ。あらゆる問題を自由に議論できるのが民主主義の本質であり、議論に聖域を設けてはならない。国家安全保障に関わる重要なテーマであればなおさらだ。

日本は気が狂った男に率いられた核保有国が目の前に存在していることを理解しているのか。この国は1950年に韓国に侵攻し、日本の上空にミサイルを発射し、日本人を拉致して人権を踏みにじっている国だ。

そんな国がすぐそばにありながら、日本人は指で耳をふさぎ、現実から逃避し、何も起きていないかのようなふりをしている。

もう一度言うが、日本の目の前には深刻な状況が存在するのだ。日本には米国の核の傘があるが、この深刻な環境を考慮し、独自の核抑止力を保有すべきかどうか、考えなければならない。

(聞き手=早川俊行)

《次回》日本の核が中国の覇権阻止 復刻 米コラムニスト チャールズ・クラウトハマー氏(下)【連載】核恫喝時代―識者インタビュー(8)

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