議論の余地ないほど安全 福島原発処理水 李炳昤・前韓国原子力安全委員会委員に聞く

政治利用防ぐ早期放出

東京電力福島第1原子力発電所の処理水を海に放出する問題を巡り、韓国の野党や一部市民団体が執拗(しつよう)に反対している。韓国政府傘下の原子力安全規制機関である原子力安全委員会で昨年10月まで委員を務めた李炳昤氏に、反対論の不当さやその背景について聞いた。(聞き手=ソウル・上田勇実)

イ・ビョンリョン 1947年忠清南道公州生まれ。ソウル大学、KAIST大学院で原子力工学を専攻。政府系シンクタンク原子力研究院で原発事業本部長や北朝鮮原発支援チーム長などを歴任。共に民主党の前身である新千年民主党の科学技術委員長、盧武鉉大統領の諮問特別補佐官なども務める。2000年から大田広域市の儒城区長(2期)。国会議員選挙に4回出馬(開かれたウリ党公認など)するも、いずれも落選。19年11月から原子力安全委員会の委員。文在寅政権の脱原発政策を批判した。

――まず処理水の安全性をどう判断しているか。

安全か危険かは議論の余地がないほど安全だ。処理水はトリチウム(三重水素)を除く60種以上の放射性物質を安全基準を満たすまで除去する多核種除去設備(ALPS)で浄化したもの。トリチウムも安全基準を満たすまで大幅に薄める。

そもそも原発事故があった12年前、大量のそれこそ汚染水が海に流れ出て、放射線の濃度は今回の放出によるものよりはるかに高かった。しかし、海洋や土壌への汚染は一切報告されていない。反対論には科学的根拠がない。

――安全なら陸地で保管すべきだという声もある。

安全できれいな水なので、どこに放出しても問題ない。ALPSの性能自体に疑問を呈する人もいるようだが、万が一故障して性能が低下したら修理して再度フィルターで濾過(ろか)し、安全な水になるまで繰り返せばいいだけのこと。安全であることが客観的に証明されているのに、それ以上何に反対するというのか。

――韓国の原子力専門家の中には反対する人もいるようだ。

一人だけ反対している人がいるが、全て言い掛かりだ。数百人いる原子力学界の中で彼一人だけ孤立している。反対の先頭に立っている野党の共に民主党が処理水放出反対のデモ集会を何度か開いたが、一度も呼ばれなかった。それほど説得力を失っているということだ。一人反対するのは何か政治的目的があるからではないかと疑わざるを得ない。

――国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長が訪韓して安全性を説明したが、入国の際に足止めされたり、国会では野党に批判された。

同じ韓国人として実に恥ずかしかった。IAEAの報告書が日本に知らされた後、韓国にも伝えられたが、野党はその翌日に「中身が空っぽ」と切り捨てた。果たして詳細に報告書を読んだのか、まともに読める人が野党にいるのか疑わしい。

――日本政府は「夏頃」放出する方針。韓国の立場ではいつ放出することが望ましいか。

いつ放出しても構わないが、早く放出した方が安全であることが早く証明される。また野党は処理水放出を来年4月の総選挙に政治利用しようと考えているようだが、むしろ安全であることが証明されたら、安全ではないという主張が過ちだったことが逆に証明されるので、野党にとって不都合だろう。放出を遅らせれば、「何か問題があるのを隠しているのではないか」と、痛くもない腹を探られてしまう。

――尹錫悦大統領は岸田文雄首相との会談で、リアルタイムの情報共有、放出過程での韓国専門家の参加、放射能濃度が基準値を越えた場合の放出停止の三つを日本側に要請した。

その三つの要請事項を日本が忠実に実行してさえくれれば、放出は問題ない。

――それでも韓国世論は反対意見が多いようだ。2008年に米国産牛肉の輸入再開を巡り、それを食べたら狂牛病になるという噂(うわさ)に国民が扇動されたこともあった。

狂牛病騒ぎの時と今回の処理水放出は違う。狂牛病は目に見えないウイルスによるものなので、漠然と恐怖心が拡散した面があったが、放射性物質は計器で検査が可能なため、確かめることができる。その意味で野党は政治利用するテーマを誤って選択したとも言える。

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