――昨年7月の安倍晋三元首相銃撃事件に続き、先月には岸田文雄首相の遊説中に爆発物が投げ込まれる事件が発生した。これについてどう思うか。
まだ詳細が十分に明らかになっていないが、最も重要なことは、この容疑者が安倍元首相の国葬に対する怒りに言及したという事実だ。このことは、彼が日本の左翼リベラルや左翼的政治思想と関係しているということを意味する。
米国では左翼による暴力事件が多発している。3月にはトランスジェンダー女性がキリスト教系の学校で銃を乱射する事件があった。その直後には、ケンタッキー州ルイビルで非常に激高していた銀行強盗が、後に左翼的政治思想を持っていたことが判明した。
現代の自由民主主義社会では、特に左翼の人たちを暴力に駆り立てている何かが起きているのだ。それに対処する必要があるが、誰もがどうすべきか分かっていない。
――作家で法政大教授の島田雅彦氏が、インターネット番組で安倍氏に対する「暗殺が成功して良かった」と語るなど、リベラル派の中にはテロを容認するかのような発言もある。
安倍氏は、トランプ前大統領と同様に、多くの敵意に耐えてきた。憲法がある民主主義社会で、人を殺すという暴力を肯定するのは言語道断だ。このような政治的な暴力行為に対しては、より厳しい対応が必要だ。
これは日本で1930年代に市民が政治家を暗殺し、それが軍部の支配につながり、民主主義が大きく後退したことを想起させる。
私が尊敬する日本の知識人で最高裁判所長官であった田中耕太郎氏は、社会的対立を解消する方法は法律か暴力の二つしかないと述べた。だから、もし人々が法の支配を尊重しないなら、暴力に走るということだ。
日本や米国が直面する問題の一つは、法の支配を尊重する姿勢が失われていることだ。米国では、最高裁が望む判決を下さない場合、判事の自宅前に人々が集まり、その判事を暗殺しようとするということが起きている。
これは、日本で政治に不満を持った人々が選挙や法制度に基づいて行動する代わりに、暴力によって問題を解決しようとすることと変わらない。
――昨年9月には、極左団体の元メンバーが山上徹也被告をモデルにした映画を制作し、安倍元首相の国葬に合わせて上映した。
私は40年以上にわたって日本に関心を持ち続けてきたが、その間に感じたことは、日本人には生命を尊重し、暴力を振るわない傾向があることだ。日本をとても尊敬しているが、今は米国の暴力的な考え方を少し取り入れているように見える。
元首相を殺した男を支持し、それが良いことだと言うのは、彼らの価値観が完全に狂っているということだ。つまり、道徳や人間の尊厳より、政治的イデオロギーを優先しているのだ。
――大手メディアや一部政治家が生み出したテロを容認するような社会風潮が、模倣犯を生んだ可能性についてどう思うか。
その可能性が高い。戦前の日本で非常に暴力的なテロが起きた後、軽い処罰で放免されたことで、二・二六事件というより凶暴なテロを誘発したことがあった。だから、これ以上の暴力行為を抑止するためには、法律を厳格に適用すべきだ。
日本は非常に平和な社会であったため、あまりにも怠慢で、寛大過ぎたのかもしれない。模倣犯による暴力事件は起きないと思っていたのだが、実際に起きてしまった。これは、暴力が制御不能になる前に、日本人が本来の正義感に立ち返るための警鐘だ。
(聞き手=ワシントン・山崎洋介)