【世日クラブ講演要旨】安保3文書で激変する沖縄の世論戦・心理戦~沖縄を守ることのできる日本にするために

日本沖縄政策研究フォーラム理事長 仲村 覚氏

本土と歴史観を一つに 日本民族の存亡を懸けて

有事の国民保護は自治体の役割

世界日報の読者でつくる世日クラブ(会長=近藤譲良)の定期講演会が25日、動画サイト「ユーチューブ」の配信を通じて行われ、一般社団法人日本沖縄政策研究フォーラム理事長の仲村覚氏が「安保3文書で激変する沖縄の世論戦・心理戦~沖縄を守ることのできる日本にするために」と題して講演した。仲村氏は「沖縄を守ることができる日本かどうかが問われている。沖縄を守れるなら、中国の工作で浸食された日本社会のさまざまな問題も一気に解決できるはずだ」と強調した。以下は講演要旨。(敬称略)
なかむら・さとる 昭和39年、那覇市生まれ。埼玉県在住。昭和54年、陸上自衛隊少年工科学校(横須賀)入校。卒業後、航空部隊に配属。複数の企業勤務を経て、平成28年には、一般社団法人日本沖縄政策研究フォーラムを設立。著書に『そうだったのか沖縄!』(示現社)、『沖縄の危機!』(青林堂)、『沖縄はいつから日本なのか』(ハート出版)、『狙われた沖縄-真実の沖縄史が日本を救う』(ハート出版)などがある。

政府が昨年12月に閣議決定した安保3文書の中身について、結論から申し上げれば私たちが思っている以上に、5年後10年後の自衛隊が別物になるほどのビジョンが掲げられている。

例えば、スタンド・オフ防衛能力というのがあるが、これはいわゆる「相手より長い槍(やり)を持って戦う」という意味だ。日本は専守防衛なので、射程でいうと150キロメートルくらいのミサイルという「短い槍」しか持ってこなかったが、長距離ミサイルも持てるようになった。これがニュースでは反撃能力を持つと表現されている。

この能力を陸海空の自衛隊で持つのだが、これを一つの命令系統で指揮できるようにするのが統合防空ミサイル防衛能力だ。今回の抑止力強化において一番の目玉と言っていい。

そして、自衛隊の一番の課題である機動展開能力についても触れられている。もし沖縄で有事になれば、沖縄の部隊だけでなく、極論だと北海道からも応援部隊が駆け付けて展開する機動力が必要だが、その輸送力がない。その強化が図られている。

実はこの中に「機動展開能力を住民避難に活用し、国民保護の任務を実施」とある。これだけを読むと、自衛隊が国民を保護する役割を持つように感じるが、あくまで国民保護は自衛隊の役割ではなく、自治体の役割だ。

沖縄で有事が起こった際、避難のための最高責任者は県知事なのだが、今の沖縄県知事は国民保護のことをあまり考えていない。しかし、国民保護の失敗も成功も、両方の経験を一番持っているのは、沖縄戦を経験した沖縄県だ。

当時、避難命令が出た時の知事は泉守紀という人物だった。泉知事は、県民は逃げず軍と一緒に戦えと言いながら、沖縄戦前に転勤工作で別の所に赴任してしまった。後任で兵庫県出身の島田叡知事が沖縄戦の3カ月前に赴任し、県民避難に尽力。10万人以上を救ったと言われているが、それでも救い切れず、島田知事も沖縄の地で散華した。

今の沖縄県知事は安保3文書反対の急先鋒(せんぽう)になっている状況であり、島田知事の行動を自分の任務だという自覚はなさそうだ。だが、政府もまた国民保護を自衛隊の役割であるかのように発信するのはいかがなものか。

有事での自衛隊の役割は、敵を排除して民間人が安全に避難できる避難経路を確保することである。自衛隊が任務に専念できるよう役割分担するのが、県民・国民を守る体制となる。有事の際は県知事の指揮の下、国民保護を行ってほしいと広報するなど、国民保護の理解を促進する必要があるだろう。

続いて抑止力に関して考えてみよう。沖縄の世論戦、心理戦は二つの無知に誘導される危機に陥っている。国民保護が理解できていないことと、抑止力が理解できていないことだ。このことは沖縄県民だけでなく、日本全体が理解できてない。

抑止力というものは戦争を起こさせないためにある。自衛隊を増強して大きな基地があると沖縄が戦場になるから反対だとか、そういったことを共産党や沖縄のメディアはよく言うわけだ。この時、はっきりと反論できるロジックを持つ政治家があまりいないのが問題だ。

整理してみると、政府はまず戦争にならないよう外交で仲良くするべきだが、いつでも仲良くできるとは限らない。万が一のために抑止力が必要であり、これが日本だと自衛隊の存在となる。そして有事となれば、実際に敵と戦って排除できる対処能力が自衛隊に求められる。抑止力と対処能力は厳密には異なるので、注意が必要だ。

そして、国内が戦場になってしまった場合、民間人が安全に逃げられるように国民保護を行わないといけない。有事では自衛隊が対処し、民間は国民保護だ。二つとも平素から訓練しないとできないことである。

安保3文書で抑止力強化のために必要なものを整えたが、ここで逆のことを考えてみないといけない。中国の日本に対する抑止力は何かということだ。日本が中国の抑止力に屈すれば負けてしまう。対中抑止力を強めつつ、対日抑止力に気を付けなければならない。

対日抑止力には当然核武装やミサイル部隊などがある。それ以外だと、憲法9条や非核三原則、専守防衛が、日本にばらまかれた対日抑止力になっているのではないかと私は思う。

また、自衛隊による沖縄への弾薬持ち込みの反対運動や琉球民族が日米に植民地支配を受けているという主張、「日中友好」という名目で親中政治家を育成して政治工作のルートをつくり上げるなど、これらすべてが中国共産党による日本弱体化へとつながっている。

防衛研究所がまとめたリポートによると、中国の人民解放軍では世論戦、心理戦、法律戦の三戦が明確にうたわれている。沖縄で行われている世論戦の工作を考えてみると、先手を取って世論を形成するとか、宣伝を集中させて規模で圧倒し流れをつくるといった、辺野古反対などで見られる手段がかなりある。

最近になり、沖縄でも尖閣・台湾有事の危機が高まっていることが地上波で流されるようになった。だが、この恐怖心を逆に利用されてしまうかもしれない。例えば、「有事になっても米軍や自衛隊は沖縄を守らない。歴史が証明している」といったことだ。また、有事になれば、精密打撃を行って厭戦(えんせん)気分に訴えるなどの心理戦が展開される懸念もある。

こうした沖縄の心理戦の背景には裏がある。それは歴史だ。歴史で沖縄の人々の心を誘導したり、逆に知らない間に県外側も沖縄との間に溝をつくってしまう。先の大戦で日本軍は沖縄を捨て石にしたとか、江戸時代や明治期に琉球王国が無理やり日本の支配下に置かれたなどの歴史観が左派メディアなどを通じて浸透してしまっている。

そのため、「被害者」側の沖縄と「加害者」側の本土が分断され、日本の団結力が弱められている。でも、実際は沖縄戦でも北海道や東京など全国から多くの兵士が沖縄を守るために戦い散華した。沖縄戦の歴史は地域の歴史ではなく、日本国民全員で共有すべき民族の歴史だ。

沖縄の歴史と本土の歴史観が分断されたままでは、中国の工作がなくても、いずれ日本は滅びてしまう。沖縄県人の先祖が日本人でなく琉球人だという教育が継続すれば、琉球王国を復興しようという機運がいつの時代か起きてくるだろう。それは歴史と文化を大切にするという保守の精神であり、決して左翼運動ではない。

よって、沖縄の歴史と日本の歴史の統合は、沖縄県民だけの課題ではなく、「日本民族」の存亡が懸かった重大な課題であり、民族一丸となって取り組むべき大事業かつ、国防の最前線なのである。

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