令和5年の政治を語る

政治評論家 田村重信氏

ロシアのウクライナ侵攻、安倍晋三元首相銃撃という歴史的な大事件の余波で世界と日本が大きく揺れた旧年を送り、令和5年が明けた。新しい年に日本の政治はどう動くのか。また、どう動くべきなのか。政治評論家の髙橋利行、田村重信両氏に語ってもらった。
たむら・しげのぶ 昭和28年生まれ。拓殖大政経学部卒。宏池会(大平正芳事務所)を経て、自民党本部に勤務。政務調査会で調査役・審議役として外交・国防・憲法・安全保障等を担当。退職後、政治評論家。
たむら・しげのぶ 昭和28年生まれ。拓殖大政経学部卒。宏池会(大平正芳事務所)を経て、自民党本部に勤務。政務調査会で調査役・審議役として外交・国防・憲法・安全保障等を担当。退職後、政治評論家。

改憲なき防衛力強化は限界

昨年、ロシアのウクライナ侵攻により国際情勢が激変した。ウクライナの次は台湾海峡との見通しも出て、日本も大きく影響を受けることになれば、防衛費を増やさなければならない。ウクライナで米国は核兵器を持つ国とは戦争しないことがはっきりした。日本独自に防衛力を高めないと、日本の安全は守れない。そこで攻撃(反撃)能力の議論がクローズアップされた。

背景には米国の防衛力自体が弱まり、今まで全部賄っていた分を分担してもらおうとの動きがある。既に日本が攻撃能力を持つことも了解している。自国製のトマホークとかを売却できるメリットもある。

ただ、今の論議は、憲法と自衛隊との関係をそのままにして進めている。それは無理だ。なぜなら、(憲法上)自衛隊は軍隊ではなく戦力でもない。そのため、保有する兵器について、政府は「自衛のための必要最小限度の範囲で」としている。普通の海外の軍隊が保有する攻撃力までは持てないので、防衛力の強化は現憲法下では限界がある。

だからまず、憲法改正で自衛隊を軍隊にして、その上で防衛力を強化しないと、本当に自国を守れるようにはならない。昨年末の防衛論議で一番欠落していたのはこの問題だ。

もう一つ注目すべきことがある。世界価値観調査レポートのデータを見ると、日本は「戦争になったら進んで自国のために戦うか」に対して「はい」と答えた人は13・2%で77カ国中最低だった。ベトナムは96・4%で最高。中国も高い。ここが問題だ。(GHQの)洗脳政策、占領政策、平和憲法。奇麗ごとだけ言っていて、いざとなったら逃げる日本人が多くなった。だから防衛力強化のためには国民の意識も変えなければいけない。

改憲で安倍氏超えよ

岸田首相主導で9条に軍隊明記を

岸田文雄首相は、安倍晋三氏を超える意味で、憲法9条を改正して自衛隊を「防衛軍」か「国防軍」にするんだと声高に言ってもらいたい。そうしないと日本が本当に駄目になる。

自民党は小泉純一郎首相の時も、軍隊にする案があったし、下野して谷垣禎一総裁の時も軍隊にするとなった。安倍氏になって9条に自衛隊を明記する案になった。ある意味逆戻りしたので、それを払拭(ふっしょく)して一歩前に進めるのは、日本にとって大事なことだ。

岸田氏は、就任直後に解散総選挙をやって勝利したように、結構、決断力がある。防衛費の問題も、安倍氏が国債発行と言っていたのを税で確保することにした。日本の安全保障環境を見て防衛費を増やすだけでは基本的には駄目だと認識しているのだろう。

宏池会だからハト派だという人もいるが、自民党は憲法改正を党是としているし、時代背景から言っても、岸信介元首相の後に登場した池田勇人氏が(安全保障よりも)経済発展を重視し、所得倍増をやった。そういう巡り合わせだ。今は経済と安全保障を両方やらなければならない。(岸田氏は)やってくれると思う。

日本は独自の国益を

国民意識に注意払え

冷戦時代は米国がソ連と戦っていた。安全保障が優先されるので、その間に日本は経済発展して1980年代以降は米国と大変な貿易摩擦になった。冷戦が終わると米国は静かに日本の経済たたきをやってきた。その結果、日本経済は30年間成長せず、給料も上がらなくなった。

「ツキディデスの罠(わな)」という言葉があるが、ナンバーワンの国は台頭する国をたたく。米国にとって冷戦時はソ連、冷戦が終わると日本、そして今は中国だ。

米国はカナダやメキシコ(近隣国)と活発に交易している。近年、中国や朝鮮半島などアジアの経済が良くなってきたから、日本はそれらの国々との関係をうまくやっていく必要がある。

安全保障だけで「敵だから」とか「脅威だから」というだけでなく、日本の国益を考えて進めていく。これからの日本は安全保障と経済をひっくるめて、国家としてどうしていくかを考えなければならない。

今年は4月に地方選がある。昨年、茨城の県議会議員選挙で自民公認候補が10人落選した。かつての保守王国でも党公認だけでは簡単に当選できない。候補者個人の力量・能力が試される時代に入った。

もう一つは、政治家の二世三世問題だ。その批判は今年はさらに大きくなる。世襲は政治不信をもたらす。別の選挙区から出馬させるとか、思い切った改革が必要になる可能性がある。

地方選でどう勝つか戦術戦略をしっかり決めてやらないと大変なことになる。ポイントは挑戦だ。首相が広島サミットを迎えられるかどうか。国政選挙並みに、地方選に勝てる態勢で臨むことが必要だ。

ただ、首相は非常に権限が強いから、本人が辞めると言わない限りなかなか引きずり下ろせない。かつての三木武夫首相も相当批判があったが最後まで粘った。(政権維持は)岸田氏の精神状態・体力が持つかどうかという話だ。

spot_img
Google Translate »