【新春特別インタビュー】日台韓連携で中国に対抗を 「第二のウクライナ化」拒否 元台湾副総統 呂秀蓮氏

21世紀は太平洋文明の時代 

日台韓ソフトパワー同盟を
台湾は自由選挙で事実上独立

台北郊外にある事務所でインタビューに応じた呂秀蓮氏。事務所は激動の半生を伝える資料や写真などを展示した記念館を兼ねている(早川俊行撮影)

中国の独裁は限界

-昨年10月に異例の3期目政権を発足させた中国の習近平体制をどう見る。

第20回中国共産党大会で習近平総書記(国家主席)は事実上、終身制となった。この時、私が抱いた疑問は、果たして14億人の中国国民は喜んでいるのか、というものだ。独裁は人民が従うことで成り立つ。もし人民が独裁に耐え切れなくなれば、いずれ行動を起こすことになる。

私を訪ねてきた欧州、米国、カナダの中国人民主化運動家たちは、台湾を大変うらやましがっていた。私は台湾の民主主義のために人生を捧げてきたが、中国の人々も中国を変え、自由と人権、尊厳を享受できる日が来ることを願っている。

-習氏は何を目指しているのか。

「中国」という漢字は、自分たちがすべての国の中心という意味だ。習氏は米国に挑戦し、世界を統治することを目指している。

習氏は21世紀という新たな時代に生きていることを忘れているようだ。過去の価値観で未来を見てはならない。全く新たな未来が待っていることを理解する必要がある。

-台湾が新型コロナウイルス対策で世界の手本となったのとは対照的に、中国のコロナ対策は多くの弊害を生んだ。

傲慢かつ狭量な中国は、海外製ワクチンを使わなかった。だが、中国製ワクチンは効果がなかったと言われている。

汚職も深刻だ。政府関係者はPCR検査や効果のないワクチンに大量の資金を投入して人々に強制する一方、裏でお金を儲けていた。検査キットを消費するために、魚など海産物にまで使ったそうだ。

法治国家ではロックダウン(都市封鎖)を行うには法律の根拠が必要だ。だが、中国は法治と人権の概念が欠如しており、いきなりロックダウンを行った。人々の不満が爆発し「白紙運動」が起きたのは、これらに原因がある。

下関条約で中台分離

-習氏は台湾統一の野望を強めている。

中国は台湾を中国古来の領土だと主張するが、私は1895年の下関条約を用いて反論している。下関条約で台湾は日本に永遠に割譲され、この時から台湾は中国の一部ではなくなった。

日本は第2次世界大戦で降伏した後、1951年のサンフランシスコ平和条約で台湾と澎湖諸島を手放した。だが、誰に返還するかは明確にしておらず、台湾は1895年の時点で中国と分かれたのだ。

私は下関条約100周年の1995年に、条約が締結された下関の旅館、春帆楼で座談会を開いた。中国がこの歴史を故意に忘れようとしているため、私はそれを思い出させるようにしている。

中国共産党の統治はあまりに台湾と異なる。台湾人は中国の統治を絶対に受け入れることはできない。

-ロシアのウクライナ侵攻を受け、次は中国が台湾を軍事侵攻する懸念が高まっている。  

ウクライナの状況は悲劇的だ。戦争に負けてはいないが、多くの人が国外に逃れ、難民となった。戦争は残忍で、決して受け入れることはできない。

これは台湾にとって極めて重要な教訓だ。台湾は小さな島であり、ウクライナのように逃げることはできない。絶対に台湾を「第二のウクライナ」にはしないと宣言しなければならない。

-若い世代では「台湾人アイデンティティー」が強まっている。

習氏は台湾問題を共産党と国民党の内戦の延長線上にあると捉えているが、大きな間違いだ。毛沢東も蒋介石もすでに亡くなっている。習氏が向き合うべきは新しい世代の台湾人だ。

蒋介石の孫が台北市長に選ばれたが、彼も祖父と同じ考え方を持っているわけではない。

台湾にはかつて、中国との統一派と独立派の対立があった。だが、1996年に選挙で総統を選べるようになった時点で、台湾は独立したと私は思っている。従って、統一か独立かの問題ではなく、小さな台湾を国際社会の中でいかに生存させるかが重要だ。

台湾は中立国になるべきというのが私の持論だ。台湾は米中という大国の間で特殊な役割を演じないといけないからだ。

台湾が日韓を仲介

-台湾は日本の安全保障にとっても死活的に重要な存在だ。

安倍晋三元首相は「台湾有事は日本有事」と語ったが、この言葉の意味は、中国が台湾を侵略する前に日本も必ず危機に陥るということだ。日本の南西諸島は台湾に近く、中国は日本の島嶼を幾つか占領する可能性がある。

また、中国は必ず北朝鮮に日本と韓国を攻撃させるだろう。韓国大統領もようやく台湾有事は韓国有事との認識を示した。従って、日本、台湾、韓国は、特に緊密な関係を構築する必要がある。

日台韓には、民主主義、科学技術、文化という共通点があり、絶対に協力し合える。この3カ国が「東北アジア民主連合」を設立すれば、東アジアの「黄金のトライアングル」となる。さらに米国がリーダーとなってダイヤモンド型の「民主太平洋連合」を構築するのだ。そこにカナダやフィリピンも加わる。私はこの構想を積極的に提唱している。

日台韓が発展させるべきは、ハードパワーではなくソフトパワーだ。21世紀は太平洋文明が花開く時代であってほしい。日台韓こそが21世紀の人類文明を引っ張っていく存在だと信じている。

-日韓には歴史問題の障害がある。

以前、韓国の教授から「日韓両国は今でも過去の事情で争いが絶えないのに、台湾と日本はとても友好的に見えるが、どうしてか」と尋ねられたことがある。私は「台湾の国際的立場はとても厳しいので、われわれは過去を振り返ることはできず、前を向いて進まざるを得ない」と答えた。

日本と韓国が今、共に向き合わなければいけないのは、隣にいる社会主義の大国だ。この脅威は目に見えて危険になっている。日韓がいつまでも過去の歴史に囚われるのは良くない。台湾は日韓の仲介役となって関係を改善できるはずだ。

-中国に望むことは。

習氏は「一つの中国」を「一つの中華」に変更すべきだ。「一つの中国」は台湾を共産党下の中国と同じ国だと認めることであり、台湾人には受け入れられない。しかし、「一つの中華」であれば、われわれは中華民族の後孫であるので、受け入れることができる。

習氏はまた、「統一」を「統合」に変えるべきだ。「統一」は台湾が彼らの一部になることだが、「統合」であれば、欧州連合(EU)と同じような形態になる。いずれ台湾、チベット、新疆ウイグルなどと共に「中華連邦」を形成することが望ましい。

(聞き手=早川俊行、村松澄恵)

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