
トランプ前米大統領が今月8日、連邦捜査局(FBI)の家宅捜索を受けた。大統領経験者に対する捜索は前代未聞だが、その背後にどのような政治的意図が隠されているのか。米紙ワシントン・タイムズの論説エディターで、保守派論客として知られるチャールズ・ハート氏に、今回の捜索が2024年大統領選に及ぼす影響などを聞いた。(聞き手=編集委員・早川俊行)

――FBIがトランプ氏の南部フロリダ州の邸宅「マールアラーゴ」を家宅捜索したが、政治的な意図はあったのか。
明らかに政治的な動機があった。極めて憂慮すべき状況だ。
司法省が政敵である前大統領に対してFBIを送り込み、家宅捜索するというのは前例がない。彼らはホワイトハウスにあるべき公文書がトランプ氏の邸宅にあるとして捜索を行ったが、もっと大きな目的がある。それは2024年大統領選前にトランプ氏を潰(つぶ)すことだ。
民主党とバイデン大統領は、トランプ氏が再び出馬することを恐れている。もしトランプ氏が再出馬すれば、再び勝利するだろう。彼らはトランプ氏が再出馬、または共和党候補指名獲得を阻止するためであれば手段を選ばないのだ。
――民主党は今もトランプ氏を恐れているのか。
非常に恐れている。その理由は、トランプ氏が16年大統領選で、民主、共和両党の政治家が何十年も無視してきた課題を訴えて当選したからだ。これは両党、特に民主党を恐怖に陥れた。
例えば、(不法移民の流入が続く)国境問題について、「国境を守らなければならない」と訴えたのはトランプ氏だけだった。トランプ氏を当選させたこれらの課題は今日、米国民の間で当時よりもさらに強力なテーマになっている。
民主党が恐れるのは、トランプ氏が真に政治を変えようとする変革者だからだ。それが何よりも怖いのだ。
彼らは司法省とFBIを武器にしてトランプ氏を追い詰めようとしている。共和党予備選前にトランプ氏を起訴し、立候補できないようにする可能性が非常に高い。
――共和党ではトランプ氏よりもデサンティス・フロリダ州知事らの方が大統領選に勝利する可能性が高いとの見方もあるが。
共和党には他にも良い候補者がたくさんいることは事実だ。だが、私が言いたいのは、民主党がトランプ氏を潰すためにやっていることは、あまりに卑劣で憲法違反であるということだ。
バイデン氏には、息子ハンター氏が行った犯罪の証拠が無限にあり、それらはすべて彼のノートパソコンに入っている。バイデン一族とウクライナ、中国との間にどのような汚職関係があったのか、深刻な疑念がある。
司法省はトランプ氏に対し、公文書を理由に家宅捜索したが、バイデン一家が行った犯罪は捜査対象になっていない。この事実は、政治的に悪意に満ちた捜索であることを示すものだ。
家宅捜索は民主党にとってブーメランになる可能性がある。多くの共和党員が政治化した司法省に嫌悪感を抱き、トランプ氏の支持者を増やす結果になるだろう。