米は「台湾防衛」明確化を ハリス前駐韓米大使 本紙インタビュー

安倍氏 同盟強化で功績

ハリス前駐韓米大使との一問一答

安倍氏構想 日米の基盤に「台湾曖昧戦略」の見直し急務


――安倍晋三元首相が地域の平和と安定のために残した功績をどう見る。

まず初めに、安倍氏に起きたことは忌まわしいことだと申し上げたい。起こってはならないことだ。世界と日本は、偉大な指導者を失ってしまった。

安倍氏は、何より日本の国民と国家の安全を優先していた。中国の脅威を理解し、地域の安全保障と米国との同盟を重視していた。

個人的には太平洋軍司令官時代に安倍氏が米ハワイ・真珠湾のアリゾナ記念館を訪れた時を含め、何度かお会いしたことがある。亡くなられたことを残念に思う。

2016年12月27日、米ハワイ・真珠湾のアリゾナ記念館で安倍晋三首相(左)、オバマ米大統領(右から2人目)と共に黙とうを捧げるハリー・ハリス太平洋軍司令官(右)(同軍提供)

――安倍氏が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」構想は、米国の外交政策にどのような影響を与えたか。

安倍氏の構想は、米国側の「自由で開かれたインド太平洋」の考え方に影響を与えたと思う。バイデン米大統領は2月に新しいインド太平洋戦略を発表したばかりだが、その中には、安倍氏の戦略を反映した要素が多く含まれている。

それにより、日米両国はインド太平洋地域における機会、挑戦、脅威を同じ形で捉えている。だからこそ、安倍氏はこれほどまでに惜しまれるのだ。

――安倍氏は台湾海峡の安定を最優先課題に位置付け、米国に対し台湾防衛を明言しない「戦略的曖昧さ」を見直し、防衛コミットメントを明確にするよう求めていた。

米国は今こそ、「戦略的曖昧さ」から脱却し、「戦略的明確さ」の政策を採り入れる時だと完全に信じている。私は駐韓大使職から離れた2021年からこれを主張し始めた。

中国は台湾に対する意図を極めて明確に示している。従って、われわれも中国が台湾を侵攻した場合にどうするかについて、同じように明確にしておく必要がある。

安倍氏は南シナ海、東シナ海、朝鮮半島、そして地域全体の安定に関して、台湾の重要性を理解していた。安倍氏の分析は完全に正しかった。安倍氏が米国に「戦略的明確さ」の立場を取るよう求めていたことを嬉(うれ)しく思う。

――ペロシ米下院議長の台湾訪問を受け、中国が台湾への軍事的圧力を強めている。

ペロシ氏が台湾を訪問するという考えを私は当初から支持していた。台湾を訪問したのはペロシ氏が初めてではない。ギングリッチ元下院議長も1997年に訪問している。

中国が台湾と米国を脅迫してきただけに、ペロシ氏が台湾訪問を実行することが絶対に必要だった。ペロシ氏が訪問をやり遂げてくれたことを嬉しく思う。

――中国が台湾侵攻に踏み切る時期についてはさまざまな議論があるが、どう見ているか。

中国は今、経済問題や新型コロナウイルス問題など多くの課題を抱えている。従って、中国が年内に台湾に対して動くとは思えない。

しかし、昨年、私の後任であるフィリップ・デービッドソン・インド太平洋軍司令官(当時)が「6年以内」と語った。つまり、2027年ということだ。

私は2020年代の10年間を「危険の10年」と述べていたが、デービッドソン氏は具体的な時期を挙げた。彼は私が司令官だった時よりもはるかに多くの情報を入手できた。

従って、われわれはデービッドソン氏の発言を真剣に受け止めるべきであり、彼の警告を無視するのは愚かなことだ。

――安倍氏は、日本の防衛費を国内総生産(GDP)比2%に増やすことを提案していた。

日本の安全保障を懸念しているのは日本人自身であり、日本が自国を守るために防衛費を増やすことは正しいことだ。安倍氏は全く的確だった。

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