トップオピニオンインタビュー「安倍外交」の継続を期待 ポンペオ前米国務長官 本紙インタビュー

「安倍外交」の継続を期待 ポンペオ前米国務長官 本紙インタビュー

バイデン政権 「弱さ」露呈  高まる台湾有事のリスク

ポンペオ前米国務長官との一問一答

安倍氏が日本を世界の舞台に 本気で中国に代償を負わせよ

Mike Pompeo 1963年、米カリフォルニア州生まれ。86年に陸軍士官学校を卒業し、ベルリンの壁崩壊前の「鉄のカーテン」を警備する任務に当たる。ハーバード大法科大学院を修了後、カンザス州で会社を設立。2010年に下院議員に初当選。トランプ前政権では中央情報局(CIA)長官、国務長官を歴任した。

◆米の抑止力低下

――安倍晋三元首相の功績をどう評価する。

安倍氏は驚くべき人物だった。「自由で開かれたインド太平洋」構想は、まさに彼のものだった。世界に対してこれを明確に語っただけでなく、自国民に対しても語った。政治指導者にとって、これは最も困難なことだ。どの指導者にとっても、軍事力を強化するより、橋を建設したり、国民に医療を提供したりすると訴えた方がいい。

安倍氏は、この構想が日本国民にとって重要である理由をはっきり述べ、戦後の安全保障秩序の中で日本がそれまでいた立場から世界の舞台に移行する覚悟ができていた。彼が残した最も重要な功績はこれだ。

今の日本の指導者も太平洋の安全保障秩序における日本の地位を考え、この構想を引き継いでくれることを祈っている。安倍氏も間違いなくそれを望んでいるだろう。

――ペロシ米下院議長の台湾訪問を受け、中国が台湾への軍事的圧力を強めている。

ペロシ氏が訪台を表明した後で、同氏と同じ民主党のバイデン米政権が「訪問は賢明ではない」と言ったが、これは中国外務省が使うのと全く同じ言葉だ。これは米国を弱め、安全を損ね、台湾に大きなリスクをもたらす。中国が自由に行動できるようになったと感じているのはその副産物だ。

中国は米議員の訪問を戦争行為であるかのように偽っている。中国の行動はペロシ氏が訪問したことへの対応ではないという事実を見落としてはならない。中国は自由な主権国家を乗っ取り、支配下に置きたい。これが真実だ。自分たちのやりたいことを正当化しているだけだ。

――バイデン政権はどう対応すべきか。

抑止力こそが米国の安全を守る中心的な考え方だ。相手が好戦的な主張や行動をしている時に、守勢に回り続けるわけにはいかない。相手がリスクや脅威を感じず、強い米国は存在しないと思えば、悪者たちは自由に動き回ることができる。われわれは世界中でそれを目の当たりにしている。北朝鮮が核実験を行う準備をしているのもその一例だ。

トランプ政権時代、北朝鮮は核実験を行わず、ロシアはウクライナを侵攻せず、中国が台湾を包囲することもなかった。なぜか。トランプ政権が本気であることを知っていたからだ。

米国防衛の模範は、米国の中心的な力、つまり経済力やエネルギーなどあらゆる非軍事ツールを動員することだ。そして、いざというときに力を発揮できる軍隊をつくり上げる。その組み合わせだ。

バイデン政権は、米国の安全保障政策はこうあるべきだというビジョンを打ち出す必要がある。悪者たちが危険を冒すだけの価値がないと分かるように防衛の覚悟を固めなければならない。

――台湾防衛に求められることは。

最も重要なことは、台湾が困難な任務を行うために必要なあらゆるツールを提供することだ。そして、日本、韓国、豪州、インドなど、中国共産党の継続的な攻撃性を見ているすべての国々に働き掛けることだ。

中国は略奪的な経済活動、スパイ活動、中央統一戦線工作部による政治的影響工作を行っている。これらはリアルな対決を強調する必要のある分野だ。

西側諸国はエネルギー資源を含む経済力を行使し、本気で中国共産党に高い代償を負わせる必要がある。私は軍事演習などについて考えるよりも、これがはるかに大きな課題だと捉えている。中国共産党はあらゆる手段を使い、台湾を自分たちの傘下に戻そうとするだろう。われわれも同じように対応しなければならないと断言できる。

◆言葉より行動を

――歴代米政権は台湾防衛を明言しない「戦略的曖昧さ」を維持してきたが、見直す必要は。

言葉は重要だ。重視していることを明確にし、透明性を高める必要がある。だが、本当に大切なのは行動だ。

バイデン政権はウクライナに支援を提供すると言い続けている。だが、支援は遅く、小規模だ。ウクライナ支援には異論もあるが、もしウクライナの主権を守るために必要なツールを提供することが彼らの政策であるなら、それをロシアに知らせるためにプレスリリースを出す必要はない。提供すればいいだけだ。

重要なのは、口で言うことではなく、実際に取る行動だ。

――中国はバイデン政権から「弱さ」を感じ取り、次期大統領選が行われる2024年までに台湾侵攻を決断するシナリオは考えられるか。

時期については予測が非常に複雑であり、分からない。だが、その質問の前提は正しい。中国の習近平国家主席は米政権から弱さを感じ取っていることは間違いない。

弱さといっても、米軍の能力が(バイデン政権が誕生した)19カ月前と比べて低下したわけではない。抑止力は「能力」と「意思」の両方によって決まる。バイデン政権は重要なものを守る意思を示していない。

カブールの陥落から1年が経過したが、私はアフガニスタン駐留米軍の削減には全面的に賛成だった。だが、一定の条件が揃(そろ)わなければ、あのような大混乱が起こることは分かっていた。

13人の米兵が殺害され、多くの米国民が置き去りにされた。習近平氏から北朝鮮の金正恩総書記、アヤトラ(イラン最高指導者ハメネイ氏)、ベネズエラのマドゥロ大統領まで、あらゆる世界の指導者たちが、米国には自国民と国益を守る覚悟がないことを目撃したのだ。そのような覚悟の欠如を見れば、習氏が台湾を中国の支配下に戻すという念願を実現するために、積極的な試みをする可能性は高くなる。

◆朝鮮半島と連動

――台湾海峡情勢が朝鮮半島に及ぼす影響は。

韓国の安全保障と経済の課題をほぼ100%動かしているのは中国共産党だ。台湾だけの問題ではない。中国は北朝鮮の金総書記を操っており、北朝鮮は実質的に習近平氏の道具、属国になっている。

われわれは(日米豪印4カ国の)「クアッド」と呼ばれる枠組みをつくり上げることにある程度成功したが、韓国やベトナムなど中国共産党がもたらす挑戦を理解する他の国々も加えるべきだ。

――朝鮮半島の非核化には何が必要か。

トランプ前大統領は、北朝鮮の最高指導者に会いに行き、決定的な打開策を見いだせるかどうかを確認したいと言った。最終的に北朝鮮を非核化させることはできなかったが、実質的な進展はあった。北朝鮮に長距離ミサイル実験と核実験を止めさせることができた。

そして、われわれは北朝鮮に対し、大量破壊兵器をすべて取り除けば、国民の生活を向上させることができるという別のビジョンを提示した。金総書記は非常に若い指導者であり、いつの日か核兵器を持たない方が安全だという結論に達することを祈っている。

重要なのは、中国共産党が金総書記の考え方に影響を与えることができないようにすることだ。金総書記は私や大統領と会うたびに、習近平氏に報告していた。首脳会談直前に公然と北京に出張するケースもあった。その都度、習氏から指導を受けていた。

われわれとの会談では、どの会話にも中国からの指示が感じられた。中国共産党の独裁者に頼らなくても、自身と国民の幸福を守れることを金総書記に納得させなければならない。

――次期大統領選に出馬する考えは。

「神のみぞ知る」だ。11月の中間選挙までは、共和党を議会の多数派にするために毎日働くつもりだ。

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