フィンランド・スウェーデンNATO加盟問題【ウクライナ危機 識者に聞く】

アジア経済研究所研究員 今井宏平氏

国連で演説するトルコのエルドアン大統領=2021年9月21日(UPI)

――トルコはNATOの一員でありながらロシアのミサイル防空システムを導入するなど、NATOへの帰属意識を疑いたくなるところもあるが。

トルコ政府はNATOを重要な組織と位置付けている。ロシアとの関係も深めてはいるが、NATOを脱退するといった動きは考えづらい。トルコは地政学的に難しい位置にあるため、一つの大国に過度に依存しないという特徴がある。NATOに入りながらも一定程度ロシアや中国とも協力していくなど全方位で外交を展開するといった具合である。トルコ国民に対する世論調査でも、NATOは重要だという意見は多い。

一方NATOもトルコを重要視している。ロシアに近く、イラン、イラク、シリアといった国々にも近い、安全保障上トルコはNATOで重要な役割を果たせる。EU(欧州連合)への加盟交渉は停滞しているが、EUとNATOではトルコの重みが違う。

――スウェーデン、フィンランドのNATO加盟問題で、今後のトルコの出方を占う上でも、エルドアン大統領の政治思想や手法が気になる。最近、独裁色やイスラーム主義への傾倒が指摘されているが。

エルドアン大統領の外交の基本はプラグマティストという点である。その一方で、思想信条は保守的でイスラームに傾倒している部分がある。オスマン帝国時代の版図である地域に影響を及ぼそうと考える新オスマン主義が指摘されることもあるが、それはどちらかと言えば、国内世論向けの訴えだ。最近は新オスマン主義的外交を批判していたアラブ首長国連邦やサウジアラビアとも関係が改善している。

――ウクライナのオデッサ港の封鎖で世界的な食糧危機が心配されている。もし、海上封鎖が解かれ、黒海が輸送ルートとして使えるようになった場合、トルコの役割は大きくなるのではないか。

トルコが黒海の大国だと自負する理由は、1936年のモントルー条約を根拠に黒海と地中海を結ぶボスポラス海峡とダーダネルス海峡を管理しているからだ。海上封鎖が解かれ、黒海から食糧輸出が可能になれば、ボスポラス海峡とダーダネルス海峡を必ず通るので、やはり重要な役割を担うことになると思う。ただ、どの段階で積み荷を通すかなど、その判断は難しいだろう。(聞き手=特別編集委員・藤橋 進)

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