米国で注目を集める黒人の女性保守派活動家、キャンディス・オーウェンズ氏の著書『ブラックアウト』の邦訳版が出版された(方丈社刊)。民主党は黒人の味方だという認識は米国のみならず日本でも定着しているが、オーウェンズ氏の見方は正反対だ。黒人を福祉漬けにして自立心を奪ってきたのが民主党であり、同党の「新たな奴隷農場」から脱出しなければならないと訴えている。本書は黒人に向けて書かれたが、自助の精神なき社会に希望はないとの主張は、活力を失った日本社会にも通じるものだ。翻訳を担当したジャーナリストの我那覇真子氏に、本書を通じて日本人に伝えたいメッセージなどを聞いた。(聞き手=編集委員・早川俊行)
――邦訳版を出した目的は。
日本人は今、自分の国で起きていることに気付き、行動に移さなければいけない時に来ています。米国では何の肩書きもない一般の人たちが実際に立ち上がり、国を動かす大きなうねりを巻き起こしています。その中心になっているのがキャンディスさんです。
草の根の国民が立ち上がり、国をつくっていく。そうした精神を日本にもぜひ伝えたい、われわれも学びたい。そうした思いから邦訳版出版の話を喜んで引き受けました。
――本書は、現代の米国の黒人は「民主党の奴隷農場」に囚われていると断じ、民主党は黒人の味方だという既成概念を根本から覆しています。
米国では、ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切、BLM)運動が話題になっていますが、キャンディスさんはこの運動をフェイクだと断じ、黒人はそうした嘘から目覚めなければいけないと強く訴えています。その号令が、本書のタイトル『ブラックアウト』なのです。
福祉漬けで民主党の集票マシーンに
これはどういうことかと言うと、黒人は永遠の被害者で、差別され続けるかわいそうな存在である、だから福祉政策を強く打ち出す民主党に投票しなさい、そういうシナリオが作り上げられているのです。かつて差別が存在したことは事実です。しかし、黒人は今も搾取され続けているという自虐史観を植え付けられ、民主党の集票マシーンにさせられてしまっているのです。
「民主党の奴隷農場」から脱却しなければ、本当の黒人コミュニティーの幸せはないし、成功も遠のいてしまう。キャンディスさんはそう訴えているのです。『ブラックアウト』とは、民主党の奴隷農場からブラック(黒人)がアウト(脱出)するという意味です。
われわれ日本人も何かから脱出する、「ジャパンアウト」をしないといけません。
――奴隷というと、鎖でつながれ、強制労働をさせられるといったイメージがあります。現代の黒人は法的には平等でも、過剰な福祉政策などによって自立心が奪われ、精神的、思想的に奴隷状態に置かれているということでしょうか。
そうです。情報戦によって自虐史観を植え付けられ、精神的に囚われの身、奴隷化されているのが、現代の黒人だというのです。黒人に自由を与えたのは民主党だという勘違いをしている人が少なくありません。
ブラックアウトはもともと停電という意味です。黒人はこれまで、民主党によってライトをともされ、誘導されてきた。ここから脱却するためには、このライトを停電させ、自分たちの手で明かりをともし、自主独立の精神で進んでいく必要がある、という意味もタイトルに込められています。
――オーウェンズ氏も若い頃はリベラルな価値観に傾斜していましたが、トランプ大統領の選挙演説を聞いて目が覚めたと述べています。トランプ氏のメッセージはなぜ彼女の琴線に触れたのでしょうか。
キャンディスさんは、トランプ氏の「何を失うというのですか?」という言葉でハッとしたと述べています。オブラートに包んだ表現で支持を訴えるのではなく、黒人に対して「これ以上、何を失うというのだ」というダイレクトなメッセージが、トランプ氏は本音で語る人物だと伝わったのではないでしょうか。
黒人社会は今、層の厚いプロパガンダによってがんじがらめにされています。トランプ氏のように力強い言葉でダイレクトに訴えかける人でないと、この状況から黒人を引っ張り出すことができない。キャンディスさんはそう気付いたのでしょう。