「民主」VS「権威」の戦場【ウクライナ危機 識者に聞く】

米ヘリテージ財団アジア研究センター長 ウォルター・ローマン氏

国連総会の緊急特別会合が開催される中、ニュヨークの国際連合本部ビル前でウクライナの旗を掲げて抗議する人=2022年2月28日(UPI)

ロシアによるウクライナ侵攻は、中国にどのような影響をもたらすか。

米国や欧州諸国がロシア情勢に忙殺されることは、中国にとってプラスとなる。これにより、欧米諸国が一体となって、中国に対応できなくなるからだ。

中露両国は、大局的な戦略目標を共有しており、世界における米国の役割を弱めることは、両国にとって共通の利益となる。

ただ、ロシアが負ければ、中国にとって状況は悪い方向に進む。欧米諸国は自信を強めた上に、今度は中国への対応に集中できるようになるからだ。

米ヘリテージ財団アジア研究センター長 ウォルター・ローマン氏
Walter Lohman 米バージニア大学で修士号取得。故ジョン・マケイン元上院議員のスタッフや米ASEANビジネス評議会副会長などを経て、2007年からヘリテージ財団アジア研究センター長。13年からはジョージタウン大学の非常勤教授も務める。

一方で、中国はこれまで築いてきたウクライナとの関係がある。ウクライナに権益を持ち、同国政府との協力関係もあるため、ロシアによる侵攻は中国にとって好ましくない面もある。

だが、より広範な地政学的観点から見れば、ウクライナ侵攻は中国にとって利益となる。

中国の習近平国家主席は、ロシアから侵攻の計画について事前に伝えられていたのか。

推測だが、習氏はウクライナ侵攻が間もなく起きることを知っていただろう。そして、恐らくロシア自身が考えていたように、極めて短期間で成功を収めるとみていた。

現状のように見通しが立たないまま、何週間も泥沼に陥るとは考えていなかった。だから、ロシアの失敗に驚かされていることだろう。

台湾併合を試みる中国は、ウクライナ危機から何を学ぶか。

重要なことは、中国は1949年の建国以来、長年にわたって台湾を奪取するための計画を練り続けてきたことだ。習氏はプーチン氏よりはるかに賢く、同氏から何かを学ぶとは考えていない。

中国は台湾有事のシナリオに合わせて、軍隊を設計してきた。中国は非常に計画的に行動するので、もし時ではないと考えるのであれば、プーチン氏の行動に触発されて台湾侵攻を早めることはしない。

党創建100年の記念式典で演説する習近平国家主席(2021年7月1日、新華社国営通信)

中国はすでに70年以上も待ち続けてきた。どんなに時間がかかろうとも、彼らは待つことができる。

中国が学ぶとしたら、ウクライナ侵攻に対する国際社会の反応だろう。もし中国がロシアと同様の行動を取れば、広範囲にわたる厳しい制裁に直面するということだ。
中国はこれを計算に入れる必要が出てくる。大規模な軍事侵攻がリスクに見合わないと判断すれば、台湾に影響力を行使して最終的に併合するためのさまざまな手段を考えるだろう。

ウクライナ危機は、日本にとってどんな意味を持つか。

ウクライナは、将来の統治モデルをめぐる戦いの中心だ。もしロシアが勝てば米国や欧州諸国にとって大打撃となるだろう。中露などの権威主義体制が優勢で、米国や欧州、日本、韓国などの民主主義体制が衰退しているという見方を広げることになるからだ。

もし、米国や欧州、ウクライナ側が勝てば、その逆だ。潮流を一変させ、権威主義に代わる自由、民主主義の統治モデルがあるという考えを強めることになるだろう。これは日本にとって重大な意味を持っている。

理解しているとは思うが、日本は欧米やウクライナという「善」の側に立つことが重要だ。それにより、欧米の自由主義国家のパートナーとしての日本の役割を高めることになるだろう。
(聞き手=ワシントン・山崎洋介)

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