2022年憲法改正 わが党はこう挑む

憲法改正こう挑む 審査会定例開催し議論推進
自民、世論喚起へ全国で集会

馬場伸幸氏、榛葉賀津也氏、古屋圭司氏

憲法施行から75年となる2022年、独自の改憲案を持つ自民党、日本維新の会、国民民主党の3党は、憲法改正にどう挑むのか。自民党憲法改正実現本部の古屋圭司本部長、日本維新の会の馬場伸幸共同代表、国民民主党の榛葉賀津也幹事長に聞いた。

3氏はいずれも衆参両院の憲法審査会を定例的に開催し、改正議論を積極的に進めていく意向を表明。立憲民主党がこだわる国民投票法のアップグレードも「分科会方式」で並行審議が可能との立場だ。

このような積極姿勢は昨年の衆院選で、改憲に消極的・反対の立憲民主党と共産党が議席を減らし、維新、国民が勢力を拡大したことにより、両党と自民・公明に改憲派無所属を加えた改憲勢力が衆院の4分の3を超えた環境の変化がある。

古屋氏は、審議会での議論を加速させるような世論づくりのため、「全ての都道府県連に憲法改正実現本部を置く。憲法改正に向けた大小集会を(新年)早々に全国同時多発的に行う」と表明。また、若年層の理解を高めるため、SNS(インターネット交流サイト)を徹底活用すると言明した。さらに、「国政レベルの選挙は(改憲)アピールにふさわしい場だ」と述べ、夏の参院選でも憲法改正を争点にする意向を明確にした。

馬場氏は、審査会の定例日開催を前提としつつも、「自由討議をだらだら続けるのには反対」とし、各政党が改正項目を持ち寄って分科会で「集中的に議論」すべきだと表明。また、世論盛り上げには「国民の身近な問題で改正することが最重用ポイント」と述べた。

榛葉氏は、国民が憲法を学ぶ環境を護憲派が封じてきたため「国民から憲法が遠くなった」と指摘し、審査会で「国民の機が熟すまでしっかりと議論すべきだ」と表明。国会での徹底的な議論を通して「今こそ国民の手に憲法を取り戻さなければならない」と強調した。

自民の本気度が最大のエンジン
SNS活用し若者の理解促進

教育無償化は喫緊の課題

日本維新の会共同代表 馬場伸幸氏

昨年の衆院選で躍進した維新の共同代表として、国会をどうしたいか。

ここ数年、国会は与党自民党と野党第1党の立憲民主党が、国対レベルの話し合いで国会運営を決めている。そのこと自体は大きく非難するものではないが、法案の中身とか政策の必要性とか、本来重要視されるべき観点でなく、すべてが国対目線で進んできた。こんな新55年体制のぬるま湯に漬かって、与党の足を引っ張る、スキャンダルを追及する、揚げ足を取る、パフォーマンスを優先させる、そういうオールド野党でなく、政府・与党が出す政策、予算に対案を提案していくニュー野党として、国家国民のためきちんと議論をしていく国会にしたい。

昨年の衆院選後に松井代表が憲法改正について「参院選と同時に国民投票を」と一石を投じた。

二つポイントがある。憲法審査会でずっと自由討議をしていると法学部の教室みたいな雰囲気になってくる。いつ頃国民投票をするという目標の時期を掲げてやらないと、議論が前に進まないということが一つ。

今年、憲法改正をどこまで進めたいか。

二つ目は、衆院選の時は最高裁判事を信任するかどうかという国民審査を毎回行う。ああいう形で3年ごとの参院選で国民投票を行うルーティーンを定着させれば、それに従って議論が回っていく。自民党も国民投票をやって駄目になれば政権が吹き飛ぶという不安を持たず、憲法改正の国民投票がやりやすくなる。

衆院選で改憲派の議員も(全衆院議員の)4分の3くらいになった。政党会派でいっても自民、連立与党の公明、国民民主、無所属の5人の有志の会、日本維新の会、この4政党1会派が国民投票すべきだと言っているから環境は整っている。やるかやらないかは自民党の本気度次第だ。自民党は重要法案なら、かなり無理をして審議を進め、強行採決になってもやるという本気度を見せる。憲法改正を党是とする以上、本気でやってほしい。それが最大のエンジンになる。

維新や国民は審査会の定例開催を提案した。

今月始まる通常国会の定例日に定期的に開けるかどうかはまだ見えないが、自由討議をだらだら続けるのには反対だ。まず、各政党が憲法改正項目があるのかないのか意思表示して、あるのであればなぜその項目を、どのように変えるのかを憲法審査会に持ち寄るべきだ。ないところはない、反対は反対でもいいが、各政党会派が態度をはっきりさせた上で、それぞれの憲法改正項目で分科会のようなものを作って集中的に議論をしていく。そうしないと、なかなか前に進まない。

CM規制も必要だと思うので、分科会を作って集中的に議論して、最後は政治的に判断する以外にない。

憲法9条改正や緊急事態条項にどう取り組む。

9条について選択肢はかなり絞り込まれている。9条2項を削除するか、(2項を残し)3項として自衛隊の位置付けを書くか、別枠で新たな条立てをして自衛隊の設置を謳(うた)うか、大体この三つくらいだ。どこに絞り込むかは党の憲法調査会で議論していく。国会の審査会では他の政党と足並みをそろえて議論していく。

緊急事態条項については、今回の新型コロナで緊急事態宣言が発出されいろいろな問題点が指摘された。公共の福祉と私権の制限の仕方とか、私権を制限した場合の補償問題とか、そういうことの方がいま議論すべき話だ。多くの政党が、解散中に大きな天災や武力攻撃、感染症など不測の事態が起こった場合に衆院議員の身分をどうするかという話をするが、国民から見たら、そんなに関心がない。ちょっと焦点がぼけている。

維新の改憲3項目について。

特に教育無償化は喫緊の課題だ。想像以上に経済的な理由で私立高校に行けない、大学に進学できない子供が増えている。これが貧困の連鎖になり、結婚できない、子供をつくれないなど、いろいろな問題の種になっている。だから、学問を修めたい子供たちが、経済的な理由で進学できないことはなくしていく。

もう一つは、人間の一生で一番お金の必要な時期は、社会に出て結婚して子供が生まれ、その子供が進学していく時だ。だから、教育費の無償化はそんな子育て世代の家計をサポートできる。すると可処分所得が増え、個人消費が伸び、経済も成長。税収も上がり、いろいろな行政サービスが向上するという、いいローテーションができる。

国民投票のため世論を盛り上げるポイントは。

国民の身近な問題で憲法改正をすることが最重要ポイントだ。それは大阪都構想の住民投票で、2回とも投票率が70%近かったことで証明されている。

憲法改正も、国民が身近に感じて、「なるほど、そういう理由で改正しなければいけないのか」と理解いただける中身作りをしないと、派手にマスコミとかを使っても、国民は自分とは関係ないと思う。維新も3項目を作ったのは6年くらい前なので、今年は党の憲法調査会を再開し、他にどういう改正項目があるか議論していく。各政党もそういう視点で改正項目を考えていただきたい。

国民の手に憲法を取り戻そう

国民民主党幹事長 榛葉賀津也氏

衆院選後の衆院憲法審査会の与党幹事懇談会に玉木雄一郎代表が初めて参加した。

憲法は国民のものであり、私たちは国民のための議論を積極的に進めていく。衆院選の公約にも憲法議論を進めると書いた。

国会には定例日があって、参院の憲法審査会は水曜、衆院は木曜と決まっている。そのために審査会の会長は委員長手当をもらい、特別な車もついている。幹事の先生方もいて、一番大きな会議体だ。憲法審査会は参院でも年間1億1500万円、衆院ではそれ以上の予算を使っている。にもかかわらず開店休業で審査しないというのは、これこそ税金の無駄遣いだ。

今は国民の過半数が憲法改正の議論を進めるべきと考えるし、国会でも自民、公明、維新、有志の会に私たちを含めた5会派が憲法審査会をしっかり動かし、議論を深めるという考えだ。護憲派の方々も、憲法を変えたくないから審査しないなどと言っていると、ますます取り残される。なぜ憲法を守りたいか、改正すべきでないのかを審査会で堂々と主張したらいい。

憲法に対する党の基本的な考え方は。

一昨年の12月に、憲法調査会で「憲法改正に向けた論点整理」を取りまとめた。12回のうち第9回までの議論はリベラルな教授や保守の教授、いろんな有識者を呼んで、しかも全国民にフルオープンで行った。憲法議論というと改憲派対護憲派、保守対リベラルのような国を二分する契機になることが多かったが、国民と共に「この国のかたち(コンスティチューション)」を創り上げていく土台とするためだ。

基本は、激変する日本、世界の中で憲法の三つの基本原則、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を守り抜くため、憲法をアップデートすべきとの考えだ。年末の憲法審査会でも代表が述べたが、大きく分けて二つを重要視している。

まず一つが統治分野の規律密度が非常に粗いので、それをしっかり高めること。今のままでは、憲法を行間で読んだり、解釈や不文律で補うことが非常に多く、結局、法の支配と言いながら、その時々の解釈によって運用が変わり、為政者の人の支配になっていっている。もう一つは、時代が変わって人権に対する考えが憲法を作った当時とだいぶ変わってきている。特にデジタル時代に合わせて人権分野のメニューを補完することが必要だ。

具体的な検討項目は何か。

統治分野では、コロナ禍で明らかになった緊急事態における法の支配の空洞化を防ぐため、緊急事態条項を議論すべきだ。特に今回、政府は強制力のない「お願い」によって行動制限をかけた。国民はよく守ったが、私権制約の程度や補償のルールもなく、飲食店のような特定の業種だけが苦境に陥る事態になった。

また、緊急時はややもすると行政権だけが強くなってしまうので、宣言発出に国会の承認を必要とするなど、「緊急時に国家(政府)にどこまで力を持たせるか」という究極のルール作りが必要だ。これは国民が国家に権力を「与える」と同時に「歯止める」ことができる最高法規の憲法に明記すべきだ。こういう根本的な内容は自民党の案からは見えてこない。

人権分野では、やはりデジタル時代のデータ基本権の議論を深めるべきだ。憲法にデジタル時代は想定されていないから、データ基本権という概念すらなかった。SNSやネット環境にどっぷり漬かって知らぬ間に人権が侵害されていることを生身の人間ですら気が付かなくなっていたり、アメリカで選挙の広告に見せ掛けて投票を誘導したり、いろんな事態が発生している。リベラルな方々は人権が大事だ、大事だと言うが、データ基本権がないがしろになっていることで、今の時代の人権に完全な空洞化が起きている。

立民は「論憲」を強調するが、改憲ありきの議論はしないとも言っている。

立民の言っているのは議論のための議論だけするということで、それは改憲させないための議論になる。改憲するかしないかは最終的に国民が決めるので、国民をばかにした話だ。

逆に変えるためだけの議論、言い訳で議論して早く(改憲を)やってしまえというのも国民置き去りだ。お互いにゴールを決めては駄目だ。国家を分断するような議論でなくて、フラットにやればいい。

「次の参院選で国民投票を」という維新の提案をどう考えるか。

おそらく議論を進めるため、政治的にそう発言されているのだろう。最終的には国民が判断するのだから、国会ではなくて、国民の機が熟すまでしっかりと議論をすべきだ。いつまでにという期限ありきでなくて、徹底的に議論をする。

国民が憲法は何たるか勉強する環境を護憲派が封じ、国民から憲法が遠くなった。ほとんどの国民から憲法はまだ遠い。だから国会でよくよく議論をして、それを報道していただき、私たちも地元に帰って積極的にお伝えし、国民の皆さんに憲法がより身近になるようにする。戦後70有余年たって、今こそ国民の手に憲法を取り戻さなければならない。

国民参加の機会奪う国会怠慢

自民党憲法改正実現本部本部長
古屋圭司氏

岸田文雄首相(自民党総裁)は昨年の総裁選で任期内に憲法改正のメドを付けたいと語った。その本気度は。

岸田氏はややリベラルという風評があったが、私は、保守でもリベラルでもない、ニュートラルな方だと思う。憲法改正は党是に入っているし総裁選でもはっきり言っておられた。私に直接電話で本部長をやってほしいと言われた時、その言葉の端々にも、憲法改正にチャレンジしたいという意欲をすごく感じた。

実現本部となり、組織的に、あるいは活動面でどのように変わるのか。

3月の党大会で事実上の党則改正を行う。実現本部は党則79条に基づいて総裁が直接つくる機関なので、これについての明細規定はない。そこで事実上の党則改正に等しい、党の運動方針案の中に明確に盛り込む。

その内容はまず、全ての都道府県連に憲法改正実現本部を置く。もう一つは、実現本部にタスクフォースをつくり、衆院の11ブロック別に担当を決めてプッシュ型で各県連に働き掛け、憲法改正に向けた県連の会議とか車座集会、大小集会をコロナ対策をして開く。

全国での憲法集会の目的は。

岸田首相も語っていたように、あくまでも憲法改正の議論は衆参両院に設置された憲法審査会でする。だから、審査会で議論が加速するような世論を作り上げていくというのが実現本部の考え方だ。言い方を変えれば、実現本部と衆参の憲法審査会は両輪のごとく機能する。だから実現本部の事務総長には敢(あ)えて衆院憲法審査会の筆頭幹事、新藤義孝議員を充てた。

自民党は憲法改正を党是とする政党だが、今の憲法の国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3原則は全く変わらない。ただ、主権者である国民が憲法改正の賛否について主体的に参加をする機会、すなわち国民投票に参加する機会をわれわれ国会議員は奪っている。これは国会の不作為、怠慢と言われても仕方がない。だからこそ国民の皆さんに参加していただくため、実現本部は国民投票に持ち込むための世論形成に一番力を入れる。

改憲世論形成のため、新年のいつから、どのように活動するのか。

早々から始める。タスクフォースは全部で30人くらいのメンバーを内定している。講師陣も20人から30人。タスクフォースのメンバーが講師になることもあるので、トータル50~60人の大集団が動く。皆憲法については1時間でも2時間でも熱心に語れるが、たたき台として出した4項目をしっかり説明してもらう。

(憲法集会は)全国同時多発的に行う。自民党は全国に組織を持っていて、地方議員だけで何千人もいる。それをフル稼働させれば、着実に浸透していく。

もう一つはSNSを徹底活用する。特に憲法改正に正しい理解を得ていただきたいのは若年層だ。これから長い人生を送る若年層のための憲法改正だから、若い皆さんに「なるほどな」と納得していただかなければならない。そのためにSNSの活用は極めて重要だ。

審査会では立憲民主党の動きがカギになる。

3党の憲法改正案

いま憲法審査会の中で、憲法改正に連携して取り組もうというのが自民、公明、維新、国民、これだけがっちり連携ができた。維新は教育無償化や憲法裁判所など具体的に提案している。国民も玉木雄一郎代表が「分科会方式」で議論を進めることを提案した。新藤氏もそれは大賛成だと言っていた。党首が言っているということは確実に改憲に向けて動きだしたということだから、強い味方だ。

問題は立民だ。立民は年末の審査会でも、憲法の議論はしてもいいが具体的なテーマで議論するのは嫌だという迷答弁をしていた。枝野幸男前代表が安倍政権の下では憲法改正させないと言っていたが、憲法改正は安倍氏がやるのでも、国会がやるのでもなく、国民の皆さんがやるものだ。国民投票をもってしかルールを変えられないのは唯一、憲法だけだ。

新年に改正への動きをどの程度まで進めたいか。

通常国会が1月17日から始まったら、野党側も週に1回やろうと言っているのだから大いに議論する。週1回開いていったら、同じ議論の繰り返しでは生産性がないので、だんだん具体的にどうしていくか絞り込み作業をしていく。立民も相当抵抗すると思うが、世論がいま(改憲)してもいいんじゃないという空気になってくれば、いくら立民といえど反対できない。共産党は、はなから憲法改正に反対で、憲法審査会をやること自体にも反対だが。

維新は夏の参院選での国民投票を提案している。

それは一つの例示として出したと思うが、選挙と国民投票を一緒にやるのは、いろんな感情論とかメディアの対応もいろいろあるので、もう少し静謐(せいひつ)な環境の中で国民投票をすべきだ。ただ、参院選で憲法改正を争点にするというのはありだ。国政レベルの選挙は、全国に散らばっていろんな意見を言う場なので、アピールにふさわしい場だ。

参院選が終わると、衆院の解散がいつあるか分からないが常識的には3年はない。そこでしっかりと議論し、静謐な環境の中で国民投票に持ち込むのが一番賢明なやり方だ。

プロフィル
ばば・のぶゆき 昭和40年生まれ。中山太郎元外相の秘書、堺市議会議長などを経て、平成24年、衆院選初当選。大阪維新の会副代表、日本維新の会幹事長など歴任。大阪府出身、当選4回。
しんば・かづや 昭和42年生まれ。米国オタバイン大政治学部卒業。菊川町議会議員(1期)を経て、平成13年、参院選初当選。防衛・外務副大臣、参院内閣委員長など歴任。静岡県出身、当選4回。
ふるや・けいじ 昭和27年生まれ。成蹊大経済学部卒業。企業勤務、大臣秘書を経て、平成2年、衆院選初当選。国家公安委員長、自民党選対委員長、衆院議院運営委員長など歴任。岐阜出身、当選11回。
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