トップオピニオン社説旧敵国条項 中国の主張に根拠はない【社説】

旧敵国条項 中国の主張に根拠はない【社説】

 高市早苗首相は国連総会で就任後初めて行った一般討論演説の中で、国連安全保障理事会の改革を求めるとともに、国連憲章の「旧敵国条項」の早急な削除を主張した。

首相の削除要求を批判

 これに対し中国や北朝鮮が反論した。特に中国は日本が軍国主義を復活させているなどと批判し、旧敵国条項にはファシズムや軍国主義が再び国際平和と安全の脅威となることを防ぐ目的があるなどと主張。その削除に強く反対している。

 旧敵国条項とは第2次世界大戦の戦後処理のための規定で、日本など旧枢軸国の侵略の再発に備える必要がある時は安保理の許可なく武力措置を取れることや、大戦中敵国に取った行動は憲章に優先することなどを定めている(国連憲章第53条、第107条など)。

 そのため、現在ではその存在意義は失われており、1995年の国連総会では世界情勢の変化を理由に旧敵国条項を削除すべく、将来なるべく早い時期に国連憲章改正手続きを開始する決議が採択された。2005年の国連首脳会合でもこの方針が改めて確認されている。こうした経緯から、日本政府は旧敵国条項が既に「死文化している」との立場を取り、その削除を求めてきた。

 ただ国連憲章の改正には高いハードルが設けられており、国連総会で加盟国の3分の2以上の賛成を得た上で、安保理常任理事国5カ国すべてを含む加盟国の3分の2以上が批准する必要がある。そのため、改正にはこぎ着けていないのが実情だ。

 旧敵国条項がファシズムや軍国主義の脅威に対処するため残されているとの中国の主張は虚偽であり、同条項を根拠に日本への軍事行動が可能であるとする見解にも根拠がない。日本に軍国主義やファシズム復活の危険などあり得ない。

 中国は1995年の国連総会決議では削除に賛成している。しかるに昨年11月の首相の台湾有事発言以降、旧敵国条項を持ち出し、今なお有効との主張を繰り返している。首相演説への批判もその一つだ。首相に圧力をかけ、国際社会におけるわが国の評価を貶(おとし)め、世界から孤立させるための反日プロパガンダにほかならない。

 中国は日本を「新型軍国主義」国家と非難し、先の米中首脳会談での晩餐会(ばんさんかい)では習近平国家主席が「米中は日本軍国主義の侵略者と戦った」と歴史捏造(ねつぞう)の演説をするなど、あらゆる機会を捉えて日本叩(たた)きを続けている。日中関係の改善に向けて中国と意思疎通を重ね、安定的な関係構築を目指す努力は必要である。だが不当な非難やプロパガンダに沈黙を守っていては、中国の主張が正当であるかのような誤解を世界に与えてしまう。

平和の歩み積極発信を

 また、中国の主張にその都度反論するという受け身の姿勢も駄目だ。専守防衛を旨とする日本の防衛政策や、わが国が取り組んできた平和協力活動や国連への財政支援など平和国家としての実績を世界に積極的に発信し、言われなき軍国主義批判を跳ね返して中国の政治的謀略に真っ向から対抗すべきである。

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