トップオピニオン社説クールジャパン 過去検証し新戦略進めよ【社説】

クールジャパン 過去検証し新戦略進めよ【社説】

 日本文化の海外展開を支援する官民ファンド「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)」が多額の累積赤字を出し、その統廃合を巡って有識者による検討が行われている。

 赤字問題だけでなく「成功と失敗」を多角的に検証し、新たなクールジャパン戦略を推し進めるべきである。

井上信治クールジャパン戦略担当相(当時)からクールジャパン・アンバサダーに任命されたコスプレイヤーのえなこさん=9日、東京・霞が関(2020年12月9日/時事)
井上信治クールジャパン戦略担当相(当時)からクールジャパン・アンバサダーに任命されたコスプレイヤーのえなこさん=9日、東京・霞が関(2020年12月9日/時事)

多額の累積赤字を出す

 クールジャパン機構は、2013年に日本文化の海外発信に力を入れる安倍晋三政権の下、経済産業省の主導で発足した。アニメや漫画、ファッション、食などの文化の海外展開と収益化を目的とし、今年4月時点で83件に総額2040億円を投資したが、25年度末で累積赤字が540億円に膨らみ、27年度予算の概算要求では機構の要求は見送られた。

 多額の累積赤字を出した点では失敗だが、機構の発足の目的には、日本文化の海外展開を進め、その存在感を高めるという「政策目標」と、それを基にしたビジネスによる「収益性」の二つがあった。

 検証作業では、日本文化の存在感を高めるという政策目標が効果を上げたかも検討すべきである。ここ10年ほどで、日本のアニメや漫画などコンテンツ産業の人気はさらに高まっているし、日本食ブームも続いている。これらの現象に同機構がどれだけ貢献したのか、しなかったのか明らかにする必要がある。

 政策目標と収益性の二つを目標に掲げて二兎(にと)を追ったことが失敗の原因とする見方もある。しかし、文化の発信を基礎とする事業の性格上、収益性の向上だけを目指していいものかは疑問だ。

 540億円の累積赤字となったことについては、徹底的に検証して教訓としたい。その原因として指摘されるのが、支援事業の対象をコンテンツ産業以外のさまざまな分野に広げたことだ。「人工のクモの糸」を使用した繊維を開発するバイオ繊維企業「スパイバー」に140億円を投資したが、今年3月に債務超過で私的整理に入った。

 先端分野での投資にはリスクが伴う。そのリスクを機構が負うことでビジネスを支援するのが目的で、失敗もある程度は容認すべきだとも言える。しかし、そもそもクールジャパンにバイオ産業まで入れるのは、あまりに風呂敷を広げ過ぎたと言わざるを得ない。

 クールジャパンの象徴とも言えるアニメなどのコンテンツ分野でも、海外向け動画配信を手掛ける「アニメコンソーシアムジャパン」に10億円を投資したが後に撤退した。コンテンツ分野でも検証が必要だ。

海外での成功例を参考に

 経産省は8月、日本発コンテンツの海外売り上げ拡大に向けて「エンタメ・クリエイティブ産業戦略2026」を取りまとめた。副題を「ものがたり大国5か年計画」と銘打ち、24年の海外売り上げ6兆1000億円から28年に10兆円、33年には20兆円まで拡大する構想だ。

 クールジャパン機構の「成功と失敗」を検証して教訓をくみ取り、さらには韓流など海外での成功例なども参考に新戦略を軌道に乗せたい。

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