70年前に制定された売春防止法の改正に向けた動きが進んでいる。野放し状態の「買う側」を処罰対象にするとともに、インターネット犯罪の巧妙化など社会の変化に対応した実効性ある改正を急ぐべきである。

検討会が報告書まとめる
法務省の有識者検討会は先月、「売買春に係る規制の在り方」についての報告書をまとめた。見直しを求めた点は大きく二つある。
昭和31(1956)年制定の現行法は「何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない」とし、売春と買春を禁じている。しかし、処罰対象は「売る側」の客待ち・勧誘や周旋行為のみだ。
買う側は罰せられないという、いびつな法律の改正を求める声は以前からあった。検討会の報告書も買う側の勧誘行為を新たに処罰対象とすることを促している。また、罰金刑の上限を引き上げる必要性でも意見が一致した。
現行法は、「立ちんぼ」による声掛けなどで売春を誘った場合、6カ月以下の拘禁刑または2万円以下の罰金を科すとしている。罰則が軽いのは、法の目的が貧困や家庭環境などが原因で追い詰められて売春に走る女性を保護・更生につなげることにあるからだ。
しかし、近年はホストクラブでの高額な飲食代や、アイドルへの「推し活」費用を稼ぐために売春するなど、自己の責任が問われるケースが目立つ。罰金上限は引き上げるべきである。
女性の福祉と犯罪防止のバランスを見直す必要性が高まる中、処罰の拡大強化は、風紀の乱れには社会全体が強い姿勢で臨むというメッセージとなる。法改正は遅きに失している。法務省は秋の国会に提出できるよう、具体的で実効性のある法案作りを急ぐべきだ。
有識者検討会が立ち上がったのは今年3月。高市早苗首相が昨年秋、法相に見直しの検討を指示し、法改正に向けて動き出した。報告書は概(おおむ)ね妥当だが、課題もある。
売買春の定義だ。現行法は「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」と規定する。検討会では、売春する者の尊厳保護の観点から、性交に至らない性的行為も含めるべきだとの意見が出た。
これに対しては、プライバシー性の高い行為に公権力が介入することは慎重であるべき、社会的なコンセンサスがないなどの理由から慎重論が多かった。しかし、性交と性的行為のプライバシー性の高さは本質的に同じだ。法務省は定義の見直しも検討すべきである。
性の尊厳見詰め直したい
買う目的の徘徊(はいかい)と一般通行をどこで区別するのか。これも難しい問題だ。ネットを使った周旋・勧誘の巧妙化という課題もある。立ちんぼ対策を強化しても、SNS・マッチングアプリの悪用に向かうことが予想されるから、ネット対策をはじめ包括的な取り組みが必要だ。
売春の根本問題は性の尊厳蹂(じゅう)躙(りん)である。法改正論議を通じて、国民一人ひとりが性の尊厳を見詰め直す機運が高まることを期待したい。







