冬眠を控えたクマが活発に活動する季節を迎えた。昨年度は過去最多の13人の命がクマ被害で失われたが、そのうち8人の死亡事故は10~11月に発生。この2カ月だけで、全国では122人(死亡者含む)が被害に遭った。これは昨年度全被害者の約51%に相当する。警戒を強めていかなければならない。

「国難」レベルの現状
環境省によると、今年度のクマによる全国の人身被害者数は8月までに60人で、そのうち死者が6人。8月までの人身被害者数が69人で死者が5人だった昨年と似通ったペースとなっている。
中には長野県や富山県などのように、堅果類(ドングリ)の豊凶調査の結果、秋以降は山林内に留(とど)まるクマが多いと予測し、平野部や人里への大量出没の可能性は低いと見込んでいる地域もある。だが、9月だけでツキノワグマへの緊急銃猟は全国で4件実施。3日には京都府舞鶴市、28日には東京都八王子市で行われた。都内では初めてだ。
昨年の被害の多くは東北や北陸に集中していたが、それ以外の地域で相次ぐ可能性も想定しなければならない。もし対応に不慣れな地域に突然クマが出没した場合、警察や自治体、ハンターなどが的確な連携が取れるかも気掛かりだ。関係各所は特にこの時期、緊張感を持ってクマ出没に備えるべきだ。
また、クマが人間の食べ物の味を覚えてしまった場合、学習能力が高く嗅覚にも優れたクマは、食べ物を求めて倉庫や建物内へ侵入したり、積極的に人間へ近づいたりするようになるなど行動が大胆化するため、死亡事故発生のリスクが高まる。対策不足や不適切な餌付けが人々の安全を脅かす危険なクマを生み出してしまっているとすれば、それは「人災」と言わざるを得ない。
秋はクマだけでなく、繁殖期を迎えたシカによる農作物被害も深刻だ。被害状況は一時期減少したものの2020年度からは年々増加傾向で、24年度の被害金額は約78億5000万円に上った。
さらに林野庁によると、野生鳥獣による森林被害面積(24年度)のうち、シカによる食害は全体の約6割。シカの生息密度が著しく高い地域の森林では、シカの口が届く高さの枝葉や下層植生がほとんど消失している場合もあるという。むき出しとなった土壌では土砂崩れが発生しやすくなるため、頻発する台風や豪雨での被害拡大につながる懸念もある。
現在、クマやシカが「国難」レベルの課題となっているという認識を国民全体で共有していく必要があるだろう。
最新技術で進む対策
クマやシカの駆除は国を挙げて積極的に進められているが、獣害の与える影響は今後も長引く可能性が高い。自治体ではドローンや人工知能(AI)などの最新技術を使った対策を導入する所も出てきた。人間の生活圏に入り込んだ動物の早期発見や追跡に役立てているという。機材を扱える人材の確保・育成といった課題もあるが、中長期的な視野で獣害という国難を乗り越えていくべきだ。







