トップオピニオン社説民泊トラブル 規制強化はやむを得ない【社説】

民泊トラブル 規制強化はやむを得ない【社説】

 政府がインバウンド(訪日客)の受け皿として推進してきた民泊を巡って、東京都内の自治体を中心に規制強化の動きが広がっている。

 宿泊者の迷惑行為に住民からの苦情が相次いでいるためで、やむを得ない措置だ。

ドミトリールームの二段ベッド
ドミトリールームの二段ベッド

住民からの苦情相次ぐ

 2018年6月に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届け出住宅数は、26年7月時点で約4万2000件に上る。届け出住宅数が全国で最も多い3775件の新宿区では、宿泊者によるごみ出しや騒音を巡るトラブルが年々増加。区に寄せられた相談や苦情は25年度、1334件に達した。

 区は苦情に適切に対応しない事業者に行政指導や処分を行う権限を持つが、連絡が取れない事業者も少なくない。このため区は、関連する条例の改正案を来年2月の区議会に提出し、住宅地や学校周辺での新規営業を原則禁止する。施行から2年間の経過措置を設け、その後は営業中の既存施設にも適用する方針だ。これによって区内の約半数の施設が営業できなくなるとみられる。

 民泊はホテルに比べ宿泊費が安いほか、マンションの一室や一軒家などを借りられるので広いスペースの利用が可能だ。また、地元住民との交流を深めることができるなどのメリットがある。事業者は空き家を有効活用することで収入を得られる。

 ただ、区の住民からは「夜中にキャリーケースを引く音が響く」「利用者が間違って訪問してきた」といった声も寄せられ、引っ越しを余儀なくされたケースも確認されたという。区が住民の生活を守るため、規制強化に動いたことは理解できる。

 上野や浅草など人気の観光地がある台東区や羽田空港が立地する大田区も、住宅地での新規営業を禁じる条例改正を目指している。東京都以外でも、京都市が住宅地や工業地域での新規開業を事実上禁止する方針だ。

 政府は30年の訪日客6000万人という目標達成に向け、民泊を振興する観点から規制に慎重だった。しかし今年7月には観光庁が実情を踏まえ、地域の住環境や教育環境が損なわれる場合、条例によって民泊営業を実質的に禁止できるとの通知を自治体に出した。自治体の規制強化の動きはこの通知に基づくものだ。

 民泊には民泊新法による新法民泊のほか、国家戦略特区法に基づく特区民泊などがある。特区民泊に関しても苦情が相次いだため、特区に指定されている大阪市は、5月に開業申請の新規受付を停止した。

健全なサービス広げよ

 一方、規制強化によって悪質な事業者が規制のない他の自治体に流入するとの見方もある。無許可で営業する「ヤミ民泊」が増えることへの懸念も強い。ヤミ民泊や管理の不十分な民泊は、犯罪の温床となるケースもある。観光庁は今後も民泊の需要が増加するとみて、自治体による悪質事業者の取り締まりを支援するとしている。しかし、自治体の対策だけでは限界があるのではないか。政府は健全な民泊サービスを広げるため、罰則強化などを検討すべきだ。

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