インドで開かれた主要新興国の枠組み「BRICS」の加盟国・パートナー国首脳会議で採択された共同宣言は、「中東情勢での最大限の自制」を呼び掛ける一方、ウクライナ情勢に言及しなかった。中国、ロシア、イランの存在を前に、ウクライナ侵略を続けるロシアを批判できない現状が憂慮される。

「米一極支配」に対抗
米国とイランの対立によって原油輸送の要衝ホルムズ海峡の緊張が高まる中、5月のBRICS外相会議では共同声明をまとめることができなかった。しかし、今回の首脳会議では共同宣言の採択にこぎ着けた。
米国など特定国への言及は避けられたが、議長国インドのモディ首相は合意形成を優先するあまり、紛争当事国であるロシア、イランに加え、両国と歩調を合わせる中国の意向にも配慮せざるを得なかったようだ。
戦略的自立を外交理念に掲げるインドは、中露イランが加盟するBRICSや上海協力機構(SCO)に参加する一方、日米オーストラリアとの連携枠組み「クアッド」にも加わっている。しかし、ロシアのウクライナ侵略後も対露制裁には加わらず、割安となったロシア産原油や穀物の輸入を継続してきた。トランプ米政権からは厳しい追加関税措置を受け、関係は冷え込んでいる。
キルギスの首都ビシケクで開かれたSCO首脳会議では、加盟国イランへの支持が確認された。だが本当に懸念されるのは、中国やロシアによる国際法を無視した現状変更の試みに対して批判が起こりにくい国際枠組みが、グローバルサウス(新興・途上国)の結集軸として力を持つことである。
BRICSは、もともとは英国の経済学者が2001年に発表した論文で、ブラジル、ロシア、インド、中国を将来の世界経済を担う新興国として取り上げ、その頭文字からBRICと略称したものだ。これがマスメディアで注目されると、4カ国は09年に初の首脳会議を開催した。その後、南アフリカが加わりBRICSとなった。
一方で中国とロシアは、ポスト冷戦期から「米国一極支配」への対抗軸づくりを進め、01年にSCOを発足させている。
その対抗意識は、BRICSに広がっている。欧米メディアが有望な世界市場として注目したBRICSだが、加盟するグローバルサウス諸国は、先進7カ国(G7)主導の世界銀行や国際通貨基金(IMF)など既存の国際機関に対し、自らの発言力を高めようとしている。
また加盟国を増やし、国際社会への影響を強めている。24年にエジプト、エチオピア、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)、25年にはインドネシアが加わったほか、10カ国をパートナー国として認定している。
膨張主義を容認するな
かつて米ソ冷戦時代には、インドやエジプト、インドネシアなどが非同盟運動(NAM)を通じて結束を図った。今日のBRICSは、その枠組みを中露が取り込む方向へ向かわせかねない。特に中露の「力による現状変更」の試みに無批判な場として利用されてはならない。







