米同時多発テロから25年を迎える。2001年9月11日、ハイジャックされた旅客機がニューヨークの世界貿易センタービルなどに突入し、約3000人が犠牲となった。

対テロ戦で払った代償
当時のブッシュ(子)大統領は「テロとの戦い」を宣言し、アフガニスタンを攻撃した。続いて大量破壊兵器の脅威を理由にイラクに侵攻し、両国で体制転換を進めて中東秩序の再編を図ろうとした。
だが、テロの脅威を根絶することはできなかった。11年にはテロの首謀者ウサマ・ビンラディン容疑者を殺害したものの、アフガンでは内戦が続き、イラクでは新たな過激派組織が生まれた。
戦争は長期化し、多くの米兵の犠牲と巨額の負担を残した。こうした経験から米国民の間には「終わりなき戦争」への疲労感が広がった。その間、国際情勢は大きく変化した。中国が急速に台頭し、米国にとって最大の戦略課題はテロ対策から大国間競争へと移った。
オバマ、トランプ、バイデン各政権に共通していたのは、中東への過度な関与から抜け出し、より重要な戦略課題、とりわけ中国やインド太平洋への対応に資源を振り向けたいという考えだった。トランプ大統領が「終わりなき戦争の終結」を掲げたのも、その流れの中にあった。
トランプ第1次政権で仲介されたイスラエルとアラブ諸国の関係正常化を進める「アブラハム合意」は、中東の新たな秩序を構築し、米国が「終わりなき戦争」から抜け出す環境を整える試みだった。
しかし、中東が安定したわけではない。イランは核開発を進めるとともに、パレスチナのイスラム組織ハマスやレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラ、イエメンの親イラン武装組織フーシ派などの代理勢力を支援してきた。23年のハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃は、このような火種を一気に噴出させた。
こうした中でトランプ政権は今年、イスラエルと共にイラン攻撃に踏み切った。イランはホルムズ海峡の通航を脅かし、世界経済を揺さぶっている。これに対し米国は、大規模な軍事作戦の後、海上封鎖や経済制裁、限定的な攻撃による圧力をかけ続けている。
米国は、世論の支持が得にくい地上軍による介入は避けている。一方、原油高は米国内でも経済的な負担となり、イラン戦争への世論の支持も低下している。こうした中、イラン封じ込めの試みが成果を上げるのかどうかは、なお見通せない。
問われる日本の備え
日本も難しい立場にある。中東の不安定化はエネルギー価格高騰や海上輸送路の危機に直結する。一方、中国の軍事的台頭を前に、米国にはインド太平洋への関与の維持を求めなければならない。米国の資源には限りがあり、中東の混迷が続けばアジアへの集中も難しくなる。
世界秩序が大きく変化する中、日本も防衛力やエネルギー安全保障を含む自助力を高め、自らの安全と繁栄をどう支えるのか真剣に考える必要がある。







