ネパールと中国の国境地帯で起きた土石流の甚大な被害が世界に衝撃を与えている。行方不明者の救出、被災者への支援に国際社会はできる限りの協力をするとともに、原因とみられる地球温暖化への対策を加速させる必要がある。

大量の氷河と岩盤が崩落
今回の土石流による死者は1300人以上、行方不明者は日本人5人を含む5500人以上に上っている。流域の10カ所以上の発電所が被災し、トンネルに残された従業員の捜索・救出活動が行われている。一人でも多くの被災者が救出されることを祈りたい。
日本政府は、行方不明の日本人5人の安否確認への協力をネパール政府に求める一方、国際緊急援助隊の専門家を派遣し、遺体の身元確認に必要な情報収集・記録などの活動を開始している。日本も近年、豪雨による土石流や洪水被害に頻繁に見舞われている。その経験も生かし、官民で今後の復旧のためにできる限りの支援をしていきたい。
今回の土石流はヒマラヤ山脈のランタン・リルン山(7234㍍)の中腹5200㍍の地点にあった氷河と岩盤が約1000㍍下まで崩落したことで発生した。その量は、専門家の試算では2億4000万立方㍍という、とてつもないものだった。
崩落の原因については温暖化による氷河の融解を挙げる専門家が多い。岩盤の接着剤の役割を果たしていた氷河、永久凍土の融解によって崩落したとの見方だ。地球の屋根と言われるヒマラヤ山系では温暖化によって急速に氷河が減っている。
氷河が解けた水でできる氷河湖の決壊が、同じヒマラヤ山系のブータンでも起きている。ネパールでは昨年も氷河湖の決壊が原因の洪水が発生し、少なくとも11人が死亡した。ネパールや中国、インドには決壊の危険をはらんだ氷河湖が47存在するという。
高山地域の氷河の融解は欧州のアルプスや南米のアンデス山脈でも見られる。氷河のあるスイスでは昨年、氷河の崩壊で数百万㌧もの氷と岩が流れ落ち、村が完全に埋もれてしまった。今回の土石流は地球規模の問題として捉える必要があるだろう。
ネパールのカナル外相は、土石流の遠因に気候変動があるとした上で、ネパールの温室効果ガス排出量はごくわずかにもかかわらず、気候変動の「究極の代償を支払っている」と憤慨。排出量の上位3カ国である中国や米国、インドに対し補償を求める考えを示している。
国際研究チームの衛星写真分析によると、今回の土石流では数日前から、氷河や岩盤の崩落地点で解けた水が目に見えて茶色くなったり、亀裂が伸びたりするなどの兆候が認められていた。氷河崩落の早期警戒システムの開発を急ぐ必要がある。
中国は透明性ある情報を
土石流は中国のチベット自治区でも大きな被害をもたらした。にもかかわらず、中国政府は被害状況を過小に報告していると亡命チベット人や人権団体が非難している。海外メディアの現地取材を認めていない中国政府は確かで透明性のある情報を内外に公表する責任がある。







