トップオピニオン社説核ごみ文献調査 最終処分地選定が急がれる【社説】

核ごみ文献調査 最終処分地選定が急がれる【社説】

 経済産業省は、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定を巡り、茨城県常陸大宮市に文献調査の実施を申し入れた。原発の使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」の確立には最終処分地の存在が不可欠だ。市や県には国のエネルギー政策を踏まえた対応が求められよう。

高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定に関する「文献調査」の申し入れ書を経産省幹部(右)から受け取る茨城県常陸大宮市の鈴木定幸市長=31日、同市(時事)
高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定に関する「文献調査」の申し入れ書を経産省幹部(右)から受け取る茨城県常陸大宮市の鈴木定幸市長=31日、同市(時事)

常陸大宮市に申し入れ

 文献調査は処分地選定に向けた第1段階の調査。地質図や学術論文を基に2年程度をかけて火山、断層の影響を分析する。この後には概要調査と精密調査があり、3段階で計20年程度かかるとされる。常陸大宮市で文献調査が実施されれば、北海道寿都町、神恵内村、佐賀県玄海町、東京都小笠原村の南鳥島に続いて全国で5例目となる。

 常陸大宮市は茨城県の北西部に位置し、国が2017年に処分適地を示した「科学的特性マップ」では火山や活断層が付近にない「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」地域に該当する。海には接していないが、市内の一部地域は沿岸から20㌔程度で「輸送面でも好ましい」とされている。日本で初めて原子力発電が行われた茨城県東海村にも近い。

 常陸大宮市への申し入れは国が主導したもので、これは小笠原村に続き2例目となる。常陸大宮市の鈴木定幸市長は市議会定例会で、文献調査について「前向きに検討したい」と表明。市議会に「国家的課題、常陸大宮市の将来の姿に思いを巡らせ、闊達(かったつ)な議論をお願いしたい」と訴えた。早期の調査開始に向けて尽力してほしい。

 ただ寿都町と神恵内村の文献調査は既に終了しているが、知事の同意が必要な第2段階の概要調査は、北海道の鈴木直道知事が「現時点で反対」としているため実施できていない。鈴木知事は処分地選定が「北海道だけの問題」になることを懸念しているとされる。

 最終処分地は、複数の候補地が選ばれ、比較検討して最適地を絞り込むことが望ましい。核のごみは最終処分地で地下300㍍より深い岩盤に埋めて安全性を確保する。国は丁寧な説明で国民の理解を得るとともに、今後も積極的に全国の自治体に調査を申し入れるべきだ。

 国は核燃料サイクルの推進をエネルギー政策の基本方針としている。ただ使用済み核燃料を再処理する日本原燃の工場(青森県六ケ所村)はトラブルなどで完成予定時期が27回延期され、現在は26年度中の完成を目指しているが、電力会社は燃料を搬出できないため、全国の原発敷地内にたまり続けている。

 エネルギー資源に乏しい日本にとって、一度輸入したウランを繰り返し使える核燃料サイクルはエネルギー安全保障上、極めて重要だと言える。再処理工場の完成とともに、再処理で生じる核のごみの最終処分地選定を急ぐ必要がある。

次世代原発の開発推進を

 政府は今年7月、40年代までに原発を2~5基建て替える目標を盛り込んだ原子力政策の指針の改正を決定した。脱炭素を実現し、電力需要の増加に対応するには、安全性を高めた次世代原発の開発を推進すべきだ。

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