トップオピニオン社説香港民主派有罪 人権・自由への侵害許すな【社説】

香港民主派有罪 人権・自由への侵害許すな【社説】

 香港の裁判所は、中国の天安門事件の犠牲者追悼集会を主催するとともに中国共産党の「一党独裁の終結」を訴えてきた民主派団体・香港市民愛国民主運動支援連合会(支連会)とその元主席、李卓人氏らに有罪判決を下した。

 国家安全維持法(国安法)違反によるものだという。

26日、香港にオープンした「六四記念館」で、記者団の取材に応える民主派団体「香港市民愛国民主運動支援連合会」の李卓人主席(時事)
26日、香港にオープンした「六四記念館」で、記者団の取材に応える民主派団体「香港市民愛国民主運動支援連合会」の李卓人主席(時事)

一国二制度の〝終結宣言〟

 年初に始まった裁判で李元主席らは、政治的スローガンだけで国安法の国家政権転覆扇動罪を適用するのは不当で、表現の自由の侵害だと訴えた。こうしたまっとうな要求も、冷たい鉄の規律下に入った香港の司法の前ではじき返された。

 中国共産党の指導の終結を求めることは国家の憲政秩序に反し、国家の安全を脅かす行為だと主張した検察側を全面支持した香港の裁判所は、国安法施行後も支連会などが中国共産党への敵意を煽(あお)り党の信頼を損ない続けたと断罪した。

 中国は香港返還時、半世紀は一国二制度を守ると約束した。その一国二制度の下、香港には当初、言論や集会の自由があり民主派勢力の活動も許された。香港基本法(憲法)には、外交と国防を除く高度の自治権や基本的な自由、人権の保障が定められ「社会主義の制度と政策を実施しない」「資本主義制度と生活様式を50年間変えない」などと明記されている。だが四半世紀も経(た)たぬうちに一国二制度は反故(ほご)にされ、基本的人権に属する言論・集会の自由は国安法施行で抹殺された。

 「香港の良心」とも言える蘋果日報(リンゴ日報)は5年前、廃刊に追い込まれ、創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏は今年2月、禁錮20年の判決を受けた。民主派の最大政党だった民主党は昨年12月、強制解散させられ、民主派45人には2年前、国安法違反で最高で禁錮10年の判決が下された。

 支連会は毎年6月4日に天安門事件の追悼集会を主催し続け、国安法施行前年の2019年には過去最多の18万人もの香港市民が参加した。今回の有罪判決は、集会の自由そのものへのレッドカードでもあった。基本的人権として認められるべき政治的、社会的自由が否定され、一国二制度の〝終結宣言〟に等しいものだ。

 それでも香港は市場経済など資本主義制度が依然として維持されているという意見もあるが、これとて雲行きは怪しくなりつつある。香港政府は、経済運営方針を定めた初の「5カ年計画」(26~30年)を今年9月16日に公表する。自由の土壌の上に繁栄を遂げた香港が、中国と同様の計画経済の遺物を取り入れることになる。

中国の二枚舌に用心を

 約30年前の香港返還時には、「中国の香港化」が期待された。だが現実に起こったのは「香港の中国化」だった。英国式自由放任主義(レッセフェール)の波が中国全土を覆うという期待は幻想に終わり、逆に中国の一党独裁型強権統治にしてやられたのだ。

 この歴史的事実をしっかり頭に刻み、台湾への野心を隠さない中国の二枚舌と武威には用心を怠ってはならない。

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