トップオピニオン社説改正種苗法 適正な利益の確保実現を【社説】

改正種苗法 適正な利益の確保実現を【社説】

 日本で開発された農作物の海外流出防止に向けた改正種苗法が7月に成立した。この問題では日本の利益が大きく損なわれてきた。適正な利益の確保を実現すべきだ。

マスカット

海外流出防止策を強化

 改正法では、新品種を国に登録して独占的に販売することのできる「育成者権」の取得前でも無断輸出の差し止め請求を認めた。育成者権は知的財産権の一つで、取得によって登録品種の種苗や収穫物、加工品の販売などの独占が可能となる。ただ出願後の審査に3~6年かかるため、その間の海外流出を防ぐためのものだ。

 また品種登録から原則25年である育成者権の有効期限を35年、果樹などの「永年性植物」は30年から40年に延ばした。新たな開発を後押しする狙いがあるが、そのためには今回の措置や水際対策の強化などで流出防止を徹底しなければならない。

 種苗法は2020年12月の改正で、ブランド果樹などの種子や苗木を不正に国外へ持ち出した場合、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金を科すことを規定した。21年4月には第1弾として、高級ブドウ「シャインマスカット」のほか、北海道のコメ「ゆめぴりか」や長野県のブドウ「ナガノパープル」など1975品種の苗木や種子の国外持ち出しが禁じられた。24年度末時点で約7000品種が対象となっている。

 しかし農林水産省が昨年、中国や韓国の種苗会社のインターネット販売サイトを調査したところ、シャインマスカットや奈良県の高級イチゴ「古都華」など約50種が販売されているのが確認された。愛媛県の中村時広知事は今年6月、同県が開発した高級かんきつ「紅プリンセス」の苗木が中国に流出した恐れがあるとして、鈴木憲和農水相に実態解明に向けて連携して調査を実施するよう要望した。

 シャインマスカットは、農業・食品産業技術総合研究機構が33年をかけて開発したブランド果樹で「皮ごと食べられる」「種なし」「大粒」「高糖度」などの特長を持つ。「日本の宝」と言ってもいいシャインマスカットの流出に伴う損失額は年約200億円とみられている。経済的利益だけでなく、海外でのブランド価値も損なわれていることは見過ごせない。中国での栽培面積は日本の30倍近くに上るというから深刻だ。

 日本の25年の農林水産物・食品の輸出額は前年比12・8%増の1兆7005億円で13年連続で過去最高を更新した。だが、政府が同年の目標としていた2兆円には届かなかった。政府は30年までに5兆円に伸ばすとしている。この目標を達成するには、輸出先の多角化や供給力の向上はもちろん、ブランド果樹流出への対策強化も大きな課題となるだろう。

海外での品種登録拡大を

 海外流出による被害を防ぐには、無断栽培が疑われる国での品種登録も有効な方法だ。

 このほど流出防止策を強化するため、JAなどによる専門機関が設立された。海外での監視や訴訟などを受け持つが、品種登録の拡大に向けた支援も充実させる必要がある。

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