ロシアのプーチン大統領が北方領土の択捉(えとろふ)島を訪問した。ロシアによる不法占拠を既成事実化しようとするものであり、断じて容認できない。

不法占拠の正当化図る
ロシアでは2010年に当時のメドベージェフ大統領が国後(くなしり)島を訪問したが、プーチン氏が北方領土を訪れるのは初めて。極東サハリン州のリマレンコ知事と共に水産加工場を視察したという。これに先立ち、プーチン氏は海軍太平洋艦隊の軍事演習を視察するために訪れた同州ユジノサハリンスクで、クリール諸島(北方領土と千島列島)は国際文書でロシア領と確定しているなどと主張していた。
この主張は極めて不当で看過できない。北方領土は日本固有の領土だ。今から81年前の1945年8月9日、旧ソ連は当時有効だった日ソ中立条約を無視して対日参戦し、北方領土を不法占拠した。日本はポツダム宣言を受け入れ、9月2日には降伏文書に調印していたにもかかわらず、ソ連が北方領土占拠を完了したのは9月5日だった。
プーチン氏の言う国際文書が、51年9月に連合国と日本との間で締結されたサンフランシスコ平和条約だとすれば、この条約で日本が放棄した千島列島に北方領土は含まれない。そもそもソ連は、この条約に署名していないのだ。プーチン氏はこれまでも北方領土は「第2次大戦の結果としてロシア領になった」と繰り返し主張し、日ソ中立条約を無視して不法占拠を行ったことの正当化を図ってきた。国際法を軽視する姿勢の表れだと言えよう。
それはウクライナ侵攻にも示されている。2022年2月に国際法違反の侵攻を開始したプーチン政権は、同年9月にウクライナ東・南部4州を「併合」するなど「力による現状変更」を強行した。国際秩序を揺るがす暴挙であり、「法の支配」を重視する民主主義陣営はウクライナと連携してロシアの膨張主義に対抗しなければならない。
特に日本はロシアの国際法違反によって自国の領土を不法占拠されているという立場で、ウクライナと共通する面がある。今回のプーチン氏の北方領土訪問は、日本の対露制裁への対抗措置という意味合いもあるだろう。高市早苗首相は「日本国内の対ロシア感情を一層厳しくし、中長期的な関係回復を困難にした」と述べたが、ロシアの北方領土不法占拠を国際社会に広く訴え、国際世論の圧力を強めていく必要がある。
ロシアは北方領土の軍事拠点化を進めており、国後島には地対艦ミサイルシステム「バル」、択捉島には同「バスチオン」が配備されている。近年は日本周辺で、ロシア軍が中国の爆撃機や艦艇と共同で行動するケースも相次いでいる。7月には中国海軍のミサイル駆逐艦が小笠原諸島(東京都)沖の排他的経済水域(EEZ)内で射撃訓練を実施したが、付近にはロシア海軍のフリゲート艦も確認されたという。
4島一括返還訴え続けよ
日本は北方4島の一括返還を訴え続けるとともに、中露両軍の動向を十分に警戒しなければならない。







