トップオピニオン社説長崎式典座席問題 外交団から台湾排除は非礼【社説】

長崎式典座席問題 外交団から台湾排除は非礼【社説】

 台湾の台北駐日経済文化代表処の李逸洋代表は、長崎市の「長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」の席が外交使節団のエリアではなかったため、適切ではないとして欠席した。長崎市が中国への政治的配慮を優先したとの見方もあり、外交儀礼上、礼を欠く対応との批判は免れまい。

平和祈念式典で、原爆がさく裂した時刻に合わせて黙とうする参列者=9日午前11時2分、長崎市の平和公園[代表撮影]
平和祈念式典で、原爆がさく裂した時刻に合わせて黙とうする参列者=9日午前11時2分、長崎市の平和公園[代表撮影]

出席者を処長に格下げ

 台湾は抗議のため式典への出席者を駐福岡弁事処の処長に格下げした。台北駐日経済文化代表処代表は台湾の駐日大使に当たる。弁事処は領事館に相当する。台湾側は式典そのものを欠席することは避けたものの、外交使節団として扱われなかったため、大使級の代表は欠席して総領事級の処長を代理出席させた。格下げをもって抗議を示したものだ。

 台湾は中国による「一つの中国」論によって国際舞台から排除される憂き目に数知れず遭っている。だが、北京の中国政府の統治権が台湾に及んでいないことは明らかであり、普通選挙を行って政権を選択するシステムを機能させてきた。日本と正式な外交関係こそないものの、長崎市の対応は実質的に独自の政府と統治機構を持つ台湾に対する配慮を欠いていたと言わざるを得ない。

 全日本台湾連合会は長崎市の鈴木史朗市長に「長崎市の台湾代表に対する不当な扱いに断固抗議する」と題する抗議文を提出した。その中で「台湾は自由と民主主義を尊重し、長崎から発信される核兵器廃絶と恒久平和の理念を共有する、日本にとって重要な友好国である。その台湾の代表を不当に区別して扱うことは、平和を願う式典の趣旨に反するだけでなく、台湾の存在と尊厳を意図的に軽視する行為である」と訴えた。

 広島市の平和記念式典では、台湾の席は外交使節団のエリアに置かれた。李代表は式典に出席し、パラグアイ大使、ハイチ大使、バチカン大使、インド大使らと共に着席している。

 にもかかわらず、長崎市はどのような理由であえて台湾を外交使節団から外す扱いをしたのだろうか。台湾側の抗議に対し鈴木市長は、海外席の国際機関の参列者の一部として台湾の席を用意したと説明し、長崎市の対応に「理解」を求めた。しかし、その席は各国大使が座るエリアより後方であり、台湾側が非礼と受け止めたとしても不思議ではない。

 長崎市は2年前にも、治安上の理由を挙げてイスラエルを式典に招待しない方針を取り、国際的な議論を呼んだ。その際には欧米諸国の駐日大使らが欠席した経緯がある。地方自治体が国際政治上の対立に左右されるかのような対応を取ることには、強い違和感を覚える。

市長は十分な敬意を払え

 中国は核兵器をはじめとする軍事力を増強し、台湾への武力統一の威嚇を強めている。席の問題は一見すると小さな出来事に映るが、台湾にとっては国家としての尊厳と存在を懸けた問題であろう。鈴木市長は式典で「平和の原点は、人間(ひと)の痛みがわかる心を持つこと」と強調した。席の配置を巡る心の痛みも受け止め、台湾の矜持(きょうじ)に十分な敬意を払う姿勢を示すべきだ。

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