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医師行政処分 制度改革で迅速・厳罰化を【社説】

 刑事罰を受けたことによる免許取り消しなど行政処分を受ける医師が増えている。優位な立場を利用した患者へのわいせつ行為も後を絶たない。不同意わいせつなどは示談成立で不問に付されることが少なくないから、処分されたケースは氷山の一角にすぎない。

逮捕7回の精神科医

 法令を守らず、人倫にもとる行為で社会の信頼を失墜させる医師が増えているのは由々しき事態である。にもかかわらず、現行の行政処分制度は処分が甘い上、有罪確定から免許取り消しまで時間がかかる。厚生労働省は患者を守るため、臨機応変かつ迅速に処分できるよう、制度改革を急ぐ必要がある。

 厚労省は7月、刑事事件で有罪が確定するなどした医師8人と歯科医師7人に対し、免許取り消しや業務停止などの行政処分を行った。このうち免許取り消しは6人で、一度に取り消された人数としては過去最多だ。

医師法では、刑事事件で罰金刑以上の判決を受けたり、医師として品位を損なう行為があったりした場合、「戒告」「3年以内の医業停止」「免許の取り消し」の行政処分を規定している。処分は、医道審議会による審議を経て厚労相が行う。免許取り消しは2023年度1件、24年度6件、25年度10件で近年増える傾向にある。ただ、医師・歯科医師は合計約45万人に達するのに、処分数が現状に留(とど)まるのは制度が有効に機能していない証左ではないか、との疑念も生まれている。

今回免許取り消しとなった医師の中には、性犯罪、覚醒剤所持、リタリン不正処方などで複数回の逮捕歴があり、有罪判決や2回の医業停止処分を受けた精神科医が含まれる。今年春には、患者の女性への不同意性交で逮捕(7回目)されている。

 しかも、この精神科医が女性患者への暴行で最初に有罪判決を受け、医業停止2年の処分を受けてから9年が経過している。もっと早く医師免許を取り上げていれば、今回の女性患者の性被害はなかったのだ。処分の甘さと遅さが悔やまれる。

 現行制度では、原則として刑罰が確定してからでないと処分できない。医業停止処分を受けても停止期間が過ぎれば再び医業を行える。再犯率の高いわいせつ行為で有罪になった悪徳医師でも、免許が取り消されるまでは患者を診察できる。過去には、複数患者に対する不同意わいせつ罪で実刑判決を受けた精神科医が保釈中、精神科医療機関で勤務していた事例もある。被害者と示談が成立して不起訴になれば、処分対象にならないことも問題だ。年に2、3回の医道審を臨機応変に開き、独自の判断で迅速に厳しい処分が行えるようにすべきである。

倫理教育の徹底強化を

 人の命を預かり、大きな権限を持つ医師には高い倫理観が求められる。日本医師会の「医の倫理要綱」が「医師はこの職業の尊厳と責任を自覚し、教養を深め、人格を高めるように心掛ける」と謳(うた)うように、その人格と高い倫理基準で患者の信頼を得なければならない立場だ。大学医学部も倫理教育を徹底強化するなどの改革が必要である。

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