防衛省は2026年版防衛白書を公表した。ロシアの軍事侵攻を受けたウクライナでは、無人機や人工知能(AI)を活用する「新しい戦い方」が急速に発展する一方、わが国を取り巻く安全保障環境は一段と厳しさを増していると指摘している。
最先端技術を駆使した戦術は日進月歩で進化しており、それに対応する防衛力整備にも一層の迅速さが求められる。

「持続的な対応力」を強調
白書は、ロシアとウクライナの戦争について、「安価で多様なドローンが大量に投入され」「装備も戦術も短期間で次々と変化している」と分析し、「新しい戦い方」を独立した章で取り上げた。
抵抗を続けるウクライナの事例から、平時における十分な装備・物資の確保や、有事における増産体制の構築など、「持続的に対応できる力」が国防の要と強調している。
また、白書は安価な無人装備と従来型ミサイルを組み合わせた「大規模な複合攻撃」にも着目した。国際社会の支援を受けるウクライナは、米スペースXの衛星通信網「スターリンク」やAIを活用したドローンによる偵察・攻撃などを通じて、軍事イノベーションを実戦の中で生み出してきた。
こうした新たな戦術は戦局にも大きな影響を与えている。今年に入り、ウクライナ軍はロシア軍を苦戦に追い込み、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は、ロシア軍の人的損失がウクライナ軍の約8倍に達したと推計している。当初は数週間で制圧されると予想されたが、持続的対応能力の成果と言えよう。
もっとも、海に囲まれた島国である日本とは状況が異なる。しかし、AIが作戦遂行を支援する時代にあって、新しい戦い方への対応は急務であり、より迅速かつ柔軟な指揮統制が求められる。自衛隊の訓練や演習も、こうした変化を踏まえて見直していく必要があろう。
一方、ウクライナは侵攻前、国力や軍事力が弱く、同盟国もないため、結果として侵攻を防げなかった。やはり、防衛の根幹は抑止力にある。
防衛力は、国民の意思、経済力、外交力、科学技術力、教育力など、国家の総合力を基盤として築かれるものだ。その上で、「同盟国や同志国との連携を強化」し、抑止力の向上を図る方針を示している。
白書は特に活発な動きをする中国軍に「総合的な国力」で対処することを強調した。中国は著しい軍拡を遂げて海洋進出を強めており、わが国の尖閣諸島沖での活動は看過できない。
また、わが国周辺での中露軍事演習の頻発に加え、ロシアと北朝鮮の軍事協力の深化も進む。白書が指摘する通り、これらの動向は「深刻な懸念事項」と言わざるを得ない。
抑止力高める戦略構築を
年末に向けて、高市早苗内閣は国家安全保障戦略など安全保障関連3文書の改定を進める。新しい戦い方への備えを強化するとともに、外交、安全保障、経済、科学技術などあらゆる手段を総動員し、国と地域の抑止力を高める戦略を構築すべきだ。







