広島はきょう、長崎は9日に「原爆の日」を迎える。世界で初めて原子爆弾が投下され、両都市は一瞬にして壊滅、20万人以上の人々が亡くなり、戦争が終わっても多くの人が放射線の被害に苦しめられた。
この日を私たちは、原爆の犠牲者に哀悼の誠を捧(ささ)げるとともに、核兵器による惨禍を二度と繰り返してはならないとの決意を新たにする日としたい。

核兵器巡る厳しい状況
一方、目を世界に転じると、ロシアは軍事侵攻するウクライナに核の脅しをかけ続けており、中国は核弾頭を増やし、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を強行するなど急ピッチで核戦力の強化を進め、核兵器を巡る状況は厳しさを増している。
また今年は、米露間に唯一残っていた核軍縮の枠組み「新戦略兵器削減条約(新START)」が失効したほか、核拡散防止条約(NPT)再検討会議は成果文書を採択できず決裂。2015年、22年に続き3回連続で採択に失敗し、核軍縮と不拡散を目指すNPT体制の形骸化も懸念される。
今年は日本が国連加盟を果たして70年の節目の年でもある。この間、わが国は国連総会で核廃絶決議の採択を32年連続で主導してきた。唯一の被爆国である日本は、広島と長崎の惨禍を世界に伝え、核兵器による惨禍を二度と繰り返さぬよう世界に訴えていく責務があり、今後も核軍縮実現や不拡散体制強化のための取り組みを粘り強く続けていかねばならない。
それと同時にわれわれは、戦後、核抑止力が大規模な戦争を防いできた事実も正しく認識し、核の傘(拡大抑止)を含めた核抑止機能の効果的な発揮を可能とするための論議を深め、かつそれを政策に移す取り組みも怠ってはならない。
ところでオバマ米大統領(当時)が現職の米大統領として初めて広島を訪問して10年になる。23年に広島で先進7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれたこともあり、近年は広島平和記念資料館の来訪者が増え、原爆の日の式典への世界の関心も高まっている。
ただ、式典は毎年同じような手順で進められるなどすっかり形式化してしまったように感じられる。この間、被爆者や遺族の高齢化が進んだ。命の危険が迫る酷暑の中、参列者の健康に配慮し、これまでの炎天下での式典を屋内での催行に切り替えるなどの工夫が必要ではないか。
また原爆投下時の記憶を持つ人が少なくなり、語り部として、戦争を知らない若い世代に自身の体験を語り継いだり、過去の歴史を教えたりという今までの手法は限界に来ている。
抜本的見直しの時期
広島、長崎の平和への熱き願いを全世界に向け積極的に発信するとともに、被爆体験を確実に次世代に継承していくには、例えば原爆の日の国際会議開催や被爆者証言のデータベース化推進、バーチャル技術を生かしての戦時生活疑似体験など、これまでの慣例にとらわれず、式典の構成や平和教育の在り方を抜本的に見直す時期に来ているのではないだろうか。






