政府のインテリジェンス(情報収集・分析)の司令塔機能を担う「国家情報会議」が発足し、高市早苗首相を議長とする初会合が開かれた。
会議の事務局である「国家情報局」(原和也初代局長)も約730人体制で始動した。

戦後行政の課題を解決
情報力強化は、高市政権が六つの分野(外交・防衛・経済・技術・情報・人材)にわたり公約として進める国力強化政策の一環。戦後日本の情報行政は、縦割り構造と政治責任の曖昧さが長年の弱点とされてきた。国家情報会議と国家情報局の始動は、これらの課題を解決し、急速に複雑化する国際環境の中で国家として情報主権の確立に向かう歴史的な一歩である。国家情報会議設置法の成立を受けた着実な施行を歓迎したい。
これまでの内閣官房長官を議長とする内閣情報会議(事務次官級会議)は、この設置法によって首相を議長とする閣僚級会議へと格上げされた。国民の安全と国益を守るための重要インテリジェンスを、政府全体で俯(ふ)瞰(かん)的、戦略的に判断できる体制となった。国民が選んだ国会議員が閣僚として会議メンバーを構成することで、民主的統制の仕組みも明確になった。
事務レベルでは警察庁、外務省、防衛省、公安調査庁などに散在しがちであった情報が今後、国家情報局へ集約され、一元的に分析・評価することが可能となる。省庁間のセクショナリズムを克服し、有機的な協力を期待したい。
原氏は内閣官房の情報部門トップ、内閣情報官(2023年~)として高市首相に直接、国家の重要情報を適時に報告してきた。官邸とのパイプや信頼関係、危機管理の実務経験を生かせる人材だ。大型連休中に訪米し、米連邦捜査局(FBI)のカッシュ・パテル長官とも会談、日米インテリジェンスの連携に布石を打ってきた。初代局長として妥当な人事と言えよう。
原氏が国内スパイ対策、治安維持を統括する警察庁警備局長の経歴を持つことは、全国の警察網(都道府県公安部門)を通じた情報収集推進へも強みとなる。権限集中や国民監視を懸念する声もあるが、国家情報局は捜査権を持たない。対象はあくまで外国勢力による不当な干渉やスパイ行為であり、民主主義社会の根幹を守る立場だ。制度の透明性を確保しつつ、過度な不安を煽(あお)る議論には冷静な事実認識が求められる。
国会閉幕を受け高市首相は会見で、設置法成立を成果として強調した。厳しい東アジアの安全保障環境の中、情報行政を強化・効率化することは、国家を守り抜く現実政治に不可欠だ。
国民も主体的判断力を
設置法を巡る議論を通じ、情報主権の価値が再認識された。目に見えない中でも激しく情報戦が展開される今日、国家だけでなく国民一人ひとりが、自らの生活や社会を守るために必要な情報を主体的に判断していかねばならない。フェイクニュースや世論操作に対抗する国民リテラシーの向上は、国家全体の情報力を支える重要な基盤となる。制度整備とともに、国民の側の成熟も求められている。






