小泉進次郎防衛相はインターネット番組で、防衛力強化のため、核兵器に関する議論の必要性に言及した。日本国内において議論するのが難しい課題としながらも、現下の安全保障環境の変化を踏まえ、「触れざるを得ない」問題であり、「あらゆる政策をタブーなく議論し、進めなければいけない」と語った。まさに至言である。

露の脅威に対処する欧州
小泉氏も番組で触れたが、ロシアによるウクライナ侵攻後、欧州各国では防衛力強化に取り組むと同時に核政策の見直しも進めている。例えばフランスは核戦力増強の方針を打ち出すとともに、自国の「核の傘」を欧州規模に拡大する構想を表明。ドイツはフランスとの核抑止の協力体制を強化する考えを明らかにした。またフィンランドも核兵器の持ち込みを禁じる法律を改正し、持ち込みを認めた。いずれも強まるロシアの脅威に対処するための政策変更である。
アジアでも中露朝の権威主義諸国が既存の国際秩序に対する挑戦を強めており、その脅威が増大している。中でも中国は、南シナ海や台湾周辺で威圧的な行動を繰り返し、日本周辺および西太平洋では軍事プレゼンスの誇示やロシアとの軍事連携の活発化など覇権主義的な行動が目に余る。
また大陸間弾道ミサイル(ICBM)の増強や米本土を射程圏内に収め得る潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を強行するなど米国の核戦力に対抗する姿勢を強めている。さらに北朝鮮も核開発を急ピッチで進めているほか、中露両国との関係強化に動いている。
その一方、米国の力は相対的に低下しており、またイランとの戦争の長期化からアジア太平洋におけるプレゼンスに穴が開くことも懸念されるなど、日本を取り巻く安全保障環境は戦後最も厳しいものとなっている。
そのような状況に対処するには、欧州諸国と同様に、先例にとらわれず今後の安全保障政策の在り方について幅広い観点から検討を加える必要がある。小泉氏は核に関する議論に否定的な野党を「今までのものを守ることが先に来て、真に日本を守るということが後に来ている」と批判した。硬直的な発想やドグマ、イデオロギーにとらわれ、政策の見直しを頑(かたく)なに拒む姿勢は厳しい現実から目を背けるもので、亡国への道に通じる。
それを避けるには、安全保障関連3文書の改定に向け、核兵器に関する議論にも踏み込むべきだ。具体的には、原子力潜水艦の導入や現行の非核三原則から「核兵器を持ち込ませず」を外し、「持たず、作らず」の二原則に改めるなどわが国の防衛力や米国の提供する核の傘(拡大抑止)を強化するための政策について突っ込んだ議論と検討がなされる必要がある。
三原則見直しへ指導力を
このうち非核三原則については、日本維新の会は見直しを政府に提言しているが、自民党の提言には盛り込まれていない。小泉氏には、わが国の抑止力を高めるため、議論だけに終わらせず、これら政策の実現に向け防衛相として強い指導力を発揮してもらいたい。






