トップオピニオン社説副首都法 疑念ない制度設計進めよ【社説】

副首都法 疑念ない制度設計進めよ【社説】

 「副首都構想」関連法が成立した。参院本会議では、法案を提出した自民党と日本維新の会のほか、チームみらいと一部無所属議員が賛成。わずか2票差だった。

政府・与党連絡会議に臨む高市早苗首相(右端)と日本維新の会の吉村洋文代表(手前左から2人目)=13日、首相官邸
政府・与党連絡会議に臨む高市早苗首相(右端)と日本維新の会の吉村洋文代表(手前左から2人目)=13日、首相官邸

本質は国家危機管理

 大災害時に国家機能を代替させる法案で、東京一極集中の是正や多極分散型経済圏の形成が目的だ。首都機能移転については、戦後一貫して議論がなされてきたが、国際的な影響力を低下させたくない東京都の反発や政治的思惑、地域間の利害対立が壁となり、進まなかった。

 国会での議論が不十分で、窮屈な日程での採決には批判が集まる。ただ、法的な道筋が付けられた意義は大きい。

 この法律の本質は危機管理で国家の存亡に直結するものだ。

 政治、経済、金融、情報通信など国家中枢機能の大半が東京に集中する現状は、首都直下地震や富士山噴火だけではなく、有事や大規模サイバー攻撃に対しても極めて脆弱(ぜいじゃく)だ。国家がいかなる危機にあっても統治機能を維持する体制を整えることは当然の責務である。近年は首都直下地震の切迫性が指摘され、中国の軍事的台頭や台湾海峡情勢の緊迫化、サイバー攻撃の常態化など、日本を取り巻く安全保障環境は大きく変化した。

 維新は結党以来、副首都構想を「看板政策」に掲げてきた。国会議員の定数削減と並ぶ「改革のセンターピン」に位置付けている。副首都構想の前提として、維新の吉村洋文代表(大阪府知事)は、大阪市を廃止して複数の特別区に再編することを目指している。その是非を問う住民投票を2027年春の統一地方選と同日で実施することを検討している。

 野党は、住民投票と統一地方選を連動させ、相乗効果を狙う維新の目論見(もくろみ)を警戒。同日選を実施しないよう「最大限調整する」との文言が付帯決議に明記された。大阪への選定誘導はあってはならないが、選挙の期日を制限することも不適切だ。維新が反発するのも無理はない。

 法が成立した24日、大阪府以外では北海道、愛知県、福岡県が指定に意欲を示した。今後、ほかにも手を挙げる自治体が出てくることが予想される。副首都の選定には、災害リスク、交通・物流、情報通信網、行政・経済機能の集積、自衛隊や重要インフラとの連携などを客観的に評価し、最適な地域が選ばれる仕組みが求められる。政治的判断ではなく科学的根拠に基づく制度設計を行うべきだ。

 政府は1年以内に基本方針を策定する。副首都がバックアップをどの程度担うのか、あるいは予算規模などについても早めに明示を求めたい。どの地域にどのような国家機能を配置し、平時と非常時における東京との役割分担をどう考えるのか、全体像を明らかにしてほしい。

大阪ありきの懸念払拭を

 制度設計の過程で重要なのは「特定地域ありき」との疑念を完全に払拭することである。必要であれば複数の副首都に異なる役割を担わせる柔軟な発想も求められる。政府と与野党には今後、目先の政治ではなく、将来の日本を見据えた責任ある制度設計を期待したい。

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