トップオピニオン社説やまゆり事件10年 障害者への偏見なくしたい【社説】

やまゆり事件10年 障害者への偏見なくしたい【社説】

 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が殺傷された事件から10年が過ぎた。凶行の背後には、頑迷とも言える優生思想があった。また事件を通じて、措置入院制度の不備も浮き彫りとなった。障害者への偏見をなくしていくとともに、こうした課題の克服へ不断の取り組みが求められる。

大量殺人正当化の主張

 2016年7月26日未明、津久井やまゆり園に元職員の植松聖死刑囚が侵入。入所者19人を包丁で刺殺し、他の入所者24人に重軽傷を負わせ、職員2人も負傷させた。植松死刑囚は重度障害者について「人の幸せを奪い、不幸をばらまく存在」だと主張。「命を無条件で救うことが人の幸せを増やすとは考えられない」などと大量殺人を正当化した。このような歪(ゆが)んだ考えがどのように形成されたのか、解明は十分とは言えない。

 植松死刑囚は12年12月から津久井やまゆり園に非常勤職員として勤務。16年2月に「重度障害者を殺す」と話したため、施設が警察に連絡し、緊急措置入院となった。入院時の検査では大麻の陽性反応が確認された。ただ3月の退院後は、地域の医療や福祉サービスをほとんど受けないまま凶行に走った。

 厚生労働省は17年、措置入院者の退院後の支援計画作成を都道府県に義務付ける精神保健福祉法改正案を国会に提出した。ところが「精神障害者への監視、人権侵害になる」との強い批判によって廃案となった。現在、計画作成は本人が同意した場合に限られる。

 措置入院の経験者が凶悪事件を引き起こしたのは、この事件だけではない。01年6月に発生した池田小児童殺傷事件の宅間守元死刑囚=04年9月に刑執行=も、事件前に措置入院をしていた。宅間元死刑囚の場合、裁判で精神科医が「統合失調症と確定できる症状はなかった」と証言するなど詐病だったとの見方も強いが、いずれにせよ、退院後の支援が行き届いていなかったことは確かだ。

 政府はストーカーに関して、被害者の安全を確保するため、加害者に全地球測位システム(GPS)機器の装着を義務付けることを検討している。ストーカーによる悲惨な事件が後を絶たないためだ。措置入院者にも何らかの強制的な措置が求められるのではないか。

 一方、障害者への偏見をなくしていくには社会における活動の場を増やしていくことが不可欠だ。民間企業の障害者法定雇用率は今月、従来の2・5%から2・7%に引き上げられた。

 農業と福祉が協力する「農福連携」も進んでいる。農林水産省によると、こうした取り組みを行う農家や福祉事業者などは24年度末現在で計8277カ所に上る。高齢化や人手不足で悩む農家にとっては働き手を確保できる。業務を工夫して障害者を活用する企業も増えている。

結婚、育児の支援充実を

 最高裁は24年7月、障害などを理由に不妊手術を強制できるとした旧優生保護法を憲法違反と判断した。

 障害者の結婚や育児への支援なども一層の充実を図る必要がある。

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