政府は加熱式たばこに関し、紙巻きたばこと同様の規制強化を見送る方向だ。しかし、加熱式の主流煙や副流煙にも害があり、喫煙者本人だけでなく、周囲の人の健康を損なう恐れがある。対策が急がれる。

安全を示す根拠なし
加熱式は専用装置でタバコ葉を加熱し、発生した煙(エアロゾル)を吸入する。2013年に国内で発売されて以降、販売量は増え、厚生労働省の調査によれば喫煙者の4割が加熱式を使っている。
厚労省は受動喫煙対策の対応案を専門委員会に示し、大筋で了承された。対応案は、加熱式の副流煙には発がん物質など有害物質が含まれると指摘したものの、知見の蓄積が不十分で健康への影響は評価できないとしている。
20年4月に施行された健康増進法は、飲食店などを原則屋内禁煙とした。紙巻きは喫煙室のみで吸えるが、飲食は不可。加熱式には、喫煙室で飲食できる経過措置を適用した。今回は法改正には至らず、経過措置が継続される見通しだ。
一般的には、加熱式は紙巻きよりも健康への影響は少ないとの印象がある。ただ厚労省の見解では、加熱式の方が安全であることを示す科学的根拠はないとしている。同省研究班によれば、副流煙だけでなく、本人が吸い込む主流煙にも害があり、一部の発がん性物質の量は紙巻きを上回る。加熱式を吸い続ければ、高血圧などの循環器疾患やニコチン依存になる可能性があるという。
規制強化見送りに対して「予防の観点から国民の健康を重視し、紙巻きと同様の扱いにすべきだ」と主張した専門委の委員もいる。主流煙や副流煙に害があることが分かっているのであれば、加熱式への対策も強化する必要があるのではないか。
海外では加熱式への規制が強まっている。インドやタイなどでは販売が禁止され、英国やニュージーランドなどでは屋内全面禁煙になっている。世界における加熱式の販売量のうち、日本が約半分を占めているとも言われている。
政府が規制強化を見送ったのは、売り上げ減少を懸念する飲食業界への配慮があるようだ。また現在、国と地方合わせて年約2兆円のたばこ関連税収への影響も考慮しているのだろう。しかし加熱式にも有害物質が含まれる以上、放置するわけにはいくまい。
厚労省が昨年12月に公表した24年の国民健康・栄養調査の結果によれば、習慣的に喫煙している人は14.8%で、過去12年間で最低となった。政府の健康づくり計画「健康日本21(第3次)」は、32年度までに成人の喫煙率を12%まで下げる目標を掲げている。目標達成の鍵の一つが、加熱式たばこへの規制強化だと言えよう。
健康増進の施策充実を
25年の日本人の平均寿命は、女性が87.33歳、男性が81.35歳だった。女性は41年連続世界一だ。政府は平均寿命や健康上の問題がなく日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」の延伸に向け、国民の健康増進につながる施策の充実に努めるべきだ。






