トップオピニオン社説防災庁設置法 国難対処への体制整備急げ【社説】

防災庁設置法 国難対処への体制整備急げ【社説】

能登半島地震で倒壊した家屋
能登半島地震で倒壊した家屋

 防災や災害対策で、国の司令塔として位置付けられた「防災庁」の設置法が、参院本会議で可決、成立した。災害大国として日本はこの30年、数多くの自然災害に直面してきたが、今後も南海トラフ地震など国難級の大規模災害が想定されている。政府一丸となって、災害に強い体制を整えることが急務だ。

事前防災や人材育成重視

 現在、防災政策を担っている内閣府防災部門220人から、防災庁は人員を拡充。定員は1・6倍の352人となる。内閣直下に設置され、組織のトップは首相であり、防災相が実務を統括する。各府省庁への勧告権を持ち、平時からの事前防災や災害時の対応、復旧・復興までを一元的に担う。

 人命救助などの災害初動の対応や、感染症の発生、原子力防災など専門性や即応性の求められる事態には、防災庁設置後も所管の各府省庁による対応が基本だ。しかし横断的な調整が必要な場合は、防災庁を中核として政府一体の体制で臨む。

 防災庁に求められる具体的な事務は、地震や火山災害、風水害などの大規模災害に対する事前防災の推進だ。災害の分析を通じ、被害想定の精度向上を図るのみならず、社会や地域における減災・防災上の課題をあぶり出す。その上で、分野横断的に実施すべき対応や優先的に行うべき対策を抽出。全体を俯瞰(ふかん)した総合的・戦略的な計画の企画・立案も防災庁の役目だ。

 また災害が起きても柔軟に対応し、被害を最小限に抑えるという「レジリエンス」の観点からも防災庁に役割が与えられている。大規模災害発生時における国や地方自治体、民間企業の事業継続体制の構築だ。万一の時も事業をストップしないための計画や方針の推進で、社会・経済が致命的な損害を受けず、維持できることを狙いとする。

 多様化する被災者支援の体制構築も必要な取り組みだ。女性の安全や災害関連死の懸念が大きい高齢者を守るため、過去の苦い教訓をしっかり取り入れた避難所の設置も進めるべきだろう。訪日客や帰宅困難者への対応など、検討が必要な課題は想像以上に幅広い。

 未来にわたって活躍できる人材の育成も防災庁に望まれている大きな仕事の一つだ。地域間で防災意識や備えの格差を生まないためにも、研修などを通じて防災に精通した人材を育てることは必須となってくる。関係機関同士の積極的な人材交流や「防災大学校(仮称)」の設置も検討中だという。東日本大震災の際に最前線で活動していた人々も、時と共に現役を退きつつある中、過去の記憶を風化させない工夫が求められる。

あらゆる想定で備えを

 南海トラフ地震や首都直下型地震、富士山噴火など、国難級と懸念される大規模災害は、これまでの前提にとらわれない取り組みが必要になる。災害時を狙った海外からのサイバー攻撃や病院をターゲットにした身代金要求型コンピューターウイルス「ランサムウエア」の攻撃も十分警戒しなければならない。人命と人権を最優先できる「防災立国」実現のため、あらゆる想定と備えを進めていくべきだ。

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