オランダ・ハーグの仲裁裁判所が、南シナ海を領海と主張する中国の根拠である同海をほぼ囲むように設定する独自の境界線「九段線」について、域内の資源に「歴史的権利を主張する法的根拠はない」との判断を下して10年が経過した。公海である南シナ海を中国は依然として領有化しようとしており、明白な国際法違反の行為を断じて許すわけにはいかない。

法的根拠はない「九段線」
南シナ海の島嶼(とうしょ)、環礁の領有を巡っては中国、フィリピン、ベトナム、ブルネイ、マレーシア、台湾などの係争国が存在し、各国の主張が錯綜(さくそう)し複雑な問題になってきた。そこへ中国が海域のほぼ全域を囲む「九段線」での活動を歴史的権利として主張して、一方的な実効支配の動きを強めた。
その中で、中国はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内に位置するスカボロー礁(中国名・黄岩島)を2012年に奪い、フィリピンは13年に国連海洋法条約に基づき仲裁裁判所に提訴した。判決は16年7月12日に下され、中国が主張する「九段線」を否定した。
これは当然のことだ。第2次世界大戦で敗戦した日本から受け継いだとする主張には、中華人民共和国の建国が1949年という時系列的にも無理がある。敗戦当時の中華民国は現在の台湾だ。戦後独立した沿岸国の主権を「九段線」で一方的に無視できるものではない。
南シナ海は地中海より広い面積の海であり、沿岸国の領海、EEZを除く海域は公海だ。中国の主張の根拠となる「九段線」に「歴史的権利を主張する法的根拠はない」とした判断は、中国を除く沿岸国はじめ国際社会が納得するものだ。
しかし、中国は判決を「紙くず」と称し、スカボロー礁の実効支配の手を緩めず、海警局船を派遣してフィリピン船舶の巡視活動を強力な放水によって著しく妨害している。また環礁を埋め立てて人工島を築き、軍事施設を建設するなど域内の緊張を高めていることは遺憾だ。
国際法秩序に挑戦して力による現状変更を行う中国の挙動で懸念されるのは、南シナ海を原子力潜水艦の拠点として「聖域」にすることだ。今月、中国は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を太平洋に向けて発射し、成功したことを公表した。しかし、発射地点は明らかにしてはいない。どこに「第2撃能力」となるSLBMを原潜と共に潜ませているかが重要だ。
これまで日本、台湾、米国などで報道されたところによると南シナ海のいずれかの地点から発射されたと推測されている。原潜の位置は軍事機密であり、海中のため特定されにくいが、中国がますます海域の私物化を進め、排他的な行動に出る可能性もある。
各国連携し「法の支配」を
「航行の自由作戦」を行っている米海軍はじめ各国との共同訓練、海上共同活動を絶やさず、フィリピンへの護衛艦5隻の提供など各国と安全保障上の連携を強めながら、仲裁裁判所が示した判断に基づき「法の支配」が同海域に及ぶようにしなければならない。






