トップオピニオン社説はやぶさ2 地球防衛に技術役立てよ【社説】

はやぶさ2 地球防衛に技術役立てよ【社説】

 小惑星探査機「はやぶさ2」が、地球から約1億㌔離れた小惑星「トリフネ」の至近距離を高速で飛行しながら行う通過観測(フライバイ)に成功した。

 小惑星の表面から数百㍍を正確に通過させる高精度の制御技術は、衝突の恐れのある小惑星から地球を守る「プラネタリー・ディフェンス」(地球防衛)にも役立つことが期待される。

小惑星探査機 はやぶさ2
小惑星探査機 はやぶさ2

小惑星の超高速通過観測

 トリフネは初代「はやぶさ」が試料を持ち帰った小惑星「イトカワ」と似た岩石質の小惑星で、長径800㍍程度と推定される。はやぶさ2はトリフネの至近距離を通過し、表面の写真撮影のほか、赤外線カメラや分光計などによる観測を試みた。最接近の2時間前から、カメラの画像などから自律的に軌道を調整し、衝突を避けながら通過するというミッションだった。

 すれ違う際の相対速度は秒速約5㌔で、ライフル銃の弾丸の約5倍に相当する。超高速フライバイの成功で日本の高い技術力を世界にアピールできたと言えよう。この技術を小惑星衝突から地球を守るためにも生かす必要がある。

 2013年2月には、ロシア・ウラル地方チェリャビンスク州に隕石(いんせき)が落下・爆発し、約1500人が負傷した。この隕石は質量1万㌧、直径17㍍と推定されている。もっと大きな隕石が落下すれば、大規模な被害は避けられないだろう。

 米航空宇宙局(NASA)は22年9月、小惑星「ディモルフォス」に無人宇宙船を衝突させて軌道をそらす実験を行った。ただ、地球防衛に関する国際ルールは整備されていない。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は24年4月、プラネタリーディフェンスチームを発足。観測による早期発見や軌道の予測のほか、NASAや欧州宇宙機関(ESA)との協力や国連など国際機関との対応などを進めている。

 29年4月には直径約340㍍の小惑星「アポフィス」が地球に接近する。地球表面から約3万2000㌔の距離を通過する予定で、これは静止衛星よりも地球に近い。アポフィスを観測するESAの探査機ラムセスは、28年にJAXAの基幹ロケット「H3」で打ち上げる予定だ。このような協力を地球防衛を巡る国際社会の連携強化につなげたい。

 14年12月に打ち上げられたはやぶさ2は、小惑星「りゅうぐう」で砂などを採取し、20年12月に試料を納めたカプセルを地球に投下。その後、31年7月に新たな探査先の小惑星「1998 KY26」への到着を目指す「拡張ミッション」を継続している。小惑星から土壌を持ち帰る「サンプルリターン」では、はやぶさと共に世界に先駆けて実績を重ねてきた。

宇宙の平和利用に貢献を

 日本は地球防衛を含む宇宙開発で国際的な存在感を高め、宇宙の平和利用に貢献することが求められる。

 NASAが主導する国際月探査「アルテミス計画」では、日本人宇宙飛行士が月面に着陸することが決定している。政府は宇宙分野への投資などで強く後押しすべきだ

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