28人が犠牲となった静岡県熱海市の土石流災害から今月で5年が過ぎた。この災害は盛り土が一因となったため、規制法制定など対策強化のきっかけとなった。だが、現在も安全措置が講じられていない危険な盛り土が全国に少なくとも200カ所以上存在する。盛り土の放置で再び被害を出すことがあってはならない。

悪徳業者が不法投棄
土石流は2021年7月3日に発生。大雨の影響で、盛り土が造成された逢初川(あいぞめがわ)最上流部を起点に推定約5万5500立方㍍の土砂が崩落した。住宅など136棟が巻き込まれ、災害関連死1人を含む28人が死亡。最大582人が避難を余儀なくされ、現在も12世帯25人が避難生活を続けている。
地球温暖化の影響で、近年は国内でも大雨による土石流災害が増加傾向にある。ただ熱海の災害に関しては、大規模な盛り土の崩落が被害を拡大したと言えよう。
国によると、災害後に全国約3万6000カ所を調査したところ、1089カ所で造成許可や届け出の不備、廃棄物の投棄などが確認された。このうち、排水設備などの災害防止措置が施されていないのは513カ所に上り、25年7月以降の追跡調査で254カ所はいまだに対策が講じられていないことが明らかになった。
23年5月には、災害リスクがある「規制区域」で行う盛り土について、都道府県知事や政令市長らの許可を必要とすることを定めた盛土規制法が施行された。無許可造成や命令違反をした個人に3年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金、法人に3億円以下の罰金を科すことも規定された。しかし法施行後も、危険な盛り土の造成が横行しているとみられている。こうした状況に対処できなければ法の実効性が問われよう。
危険な盛り土については悪徳業者の存在も見逃せない。低価格で建設残土を引き受け、不法投棄している実態がある。自治体が撤去するよう行政指導しても「費用がない」として従おうとしない業者もいる。
土地の所有者が巻き添えを食うケースもある。「無料で田畑や森林を埋め立てて優良農地にする」などと言われ、提供した土地に違法な盛り土を造成され、業者が逃亡した場合、撤去の責任は所有者が負うことになってしまう。こうした場合、口頭で同意せず、業者から書面や図面をもらって違法でないか確認する必要がある。
悪質な業者には厳正な法の運用が求められる。福島県は「行政処分に従わなければ積極的に刑事告発する」との姿勢を示し、今年6月には無許可で土砂の搬入を続けたなどとして、茨城県の会社役員ら3人が全国で初めて盛土規制法違反容疑で福島県警に逮捕された。ただ自治体では人員不足で、調査に十分手が回らない現状がある。国の支援が必要だ。
費用回収を徹底せよ
国は自治体の行政代執行による撤去に、費用の2分の1から3分の2を助成しているが、違法な盛り土を造成した業者からの費用回収を徹底すべきだ。






