成田空港の滑走路の新設・延伸を柱とする拡張工事を巡り、千葉県と空港周辺9市町は、成田国際空港会社が土地収用法に基づく「強制収用」の手続きを行うことに同意した。成田の国際競争力強化につなげてほしい。

滑走路の新設・延伸へ
1978年5月の開港前に強制収用を行って以降、空港では対話を重視してきたが、拡張用地の取得が難航していることから、強制収用を含む土地収用法を活用する方針を表明した。千葉県の熊谷俊人知事は、方針転換について「苦渋の決断ではあるが、やむを得ないものと受け止める」と述べた。
空港では3500㍍のC滑走路を新設し、2500㍍のB滑走路を1000㍍延伸する計画がある。しかし用地の4・8%に当たる53㌶で契約のめどが立たず、今年4月に当初の予定だった2029年3月の供用開始を断念した。
空港会社は今後、国に土地収用法に基づく事業認定を申請する。事業の公益性が認定された場合、県の収用委員会が裁決すれば、土地の所有権は空港会社に移ることになる。
成田を巡っては、建設や存続に反対する勢力が闘争を展開した歴史がある。建設は1966年7月に閣議決定されたが、地元住民らが反発し、結成した「三里塚芝山連合空港反対同盟」が極左過激派の支援も受け入れたことで反対運動は先鋭化。70年安保闘争の時期とも重なり、過激な闘争方針は警察官3人が殺害された71年9月の東峰十字路事件などを引き起こした。極左過激派は安保闘争後、成田闘争に活動の主軸を移し、78年3月の開港直前には管制塔を占拠して開港を遅らせた経緯がある。
しかし90年代以降は国と地元住民との和解が進み、空港との共生に主眼が置かれるようになった。今回の方針転換は地元から収用を要望する声が上がったことによるものだ。空港の機能強化のために住民が移転する際には空港会社から補償を受けられるが、国や自治体も支援を惜しむべきではない。
滑走路の新設・延伸が実現すれば、年間の発着枠は従来の30万回から50万回に増え、羽田空港と合わせて約100万回の発着容量を確保できる。年間旅客数は現在の4000万人から7500万人に増加すると予測されている。今後20年で約2倍になるとされる世界の航空需要を取り込んでほしい。
国が2030年に訪日客6000万人という目標を掲げる中、成田の国際競争力を向上させるには、国内線の発着便数の多い羽田とのアクセス改善も大きな課題だ。京成電鉄は成田と羽田を直接結ぶ新型特急列車を30年代に導入する。現在は両空港間を約1時間40分で結ぶアクセス特急を運行しているが、新型特急の運行が始まれば所要時間は短縮される。
一層の利便性向上を
成田も、第3ターミナルを利用する格安航空会社(LCC)の充実で、23年度には国内線旅客数が国内6位の781万人に達した。三つのターミナルを集約するワンターミナル化をはじめ、一層の利便性向上に努めてほしい。






