トップオピニオン社説リニア着工容認 社会活性化へ難事業遂行を【社説】

リニア着工容認 社会活性化へ難事業遂行を【社説】

 リニア中央新幹線で未着工となっている静岡県の鈴木康友知事が、着工容認を表明した。

 東京と大阪を1時間余りで結ぶリニアが開通すれば、経済・社会の活性化や災害対策の強化につながることが期待される。一日も早い開通が求められる。

リニア新幹線試験場
リニア新幹線試験場

9年続いた議論決着

 リニアは超電導磁石の力で車体を浮上させ、最高時速500㌔で走行する次世代の高速列車だ。開通すれば、東京・品川―名古屋間は40分、品川―新大阪間は67分で結ばれる。東京、名古屋、大阪が一体となった巨大経済圏が出現し、沿線自治体では通勤圏の拡大や観光需要の増加、都市や地方に生活拠点を複数持つ「二地域居住」の促進などの効果が見込まれる。

 また東海道新幹線が大規模災害などで不通となった場合、リニアを代替ルートとして活用できるようになる。東海道新幹線の過密なダイヤを緩和する上でもリニアを開通させる意義は大きい。

 品川―名古屋間の建設工事は2014年12月に始まり、当初は27年に開業する予定だった。ところが静岡県の川勝平太前知事が、工事で大井川の水量が減少することや、南アルプスの生態系への影響などを問題視し、17年10月に静岡工区の着工に反対を表明。JR東海は対策を示したが合意には至らず、27年開業の断念に追い込まれた。

 不適切発言で24年5月に辞職した川勝氏に代わって就任した鈴木氏は、着工容認に向けた調整を進め、県の有識者専門部会は今年3月、大井川の水問題や自然環境への影響など計28項目のJR東海の対策を全て了承。静岡市と大井川流域10市町の首長らも対策を承認し、川勝氏の反対表明後、約9年続いた議論が決着した。鈴木氏は着工容認表明の際、環境保全などについて「正確な情報提供と丁寧な説明を引き続き求める」とJR東海に注文した。

 ただ品川―名古屋間の完成には10年以上かかる見込みで、年内に着工したとしても開業は36年以降になるとみられる。名古屋―新大阪間の早期着工も求められよう。

 静岡工区は山梨県早川町から長野県大鹿村に至る南アルプストンネル(全長25㌔)の一部である8・9㌔の区間。トンネルは最も深い場所で地表から1000㍍を超え、大量の地下水が流れ込むことが予想される難工事だ。

 この巨大プロジェクトには国の支援が欠かせない。木原稔官房長官は鈴木氏の着工容認表明を受けて「重大な課題にめどが付き、リニア事業は大きな節目を迎えた」と歓迎。政府は先月末に示した経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」の原案の中で、特に重視するインフラ分野の一つとしてリニアを挙げている。官民の連携で事業を遂行しなければならない。

早期に開業時期明確化を

 沿線自治体からはリニア開通による地域活性化への期待の声が上がる一方、開業時期がはっきりしないことへの不安も出ている。

 リニア建設は難事業ではあるが、JR東海はできるだけ早く開業時期を明確にしてほしい。

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