中国海軍の原子力潜水艦が太平洋に向け模擬弾頭を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射した。中国が各国に事前通知し、発射して間もなく「成功」を発表、これをメディアが報道した。
積極的に核攻撃能力を誇示して米国や同盟国を威嚇したことに他ならない。
台湾統一への決意表明か
軍拡を続ける中国は核戦力も急速に増強しており、保有する核弾頭は500発を超えているとみられている。2030年には1000発を超えると予測される。
米国とロシアは今年2月に失効した新戦略兵器削減条約(新START)で戦略核弾頭の配備上限を1550発としていたが、中国の増強の勢いを受け米中露三つどもえの核軍拡競争が懸念される。
中国が続ける核軍拡の過程で、運搬手段であるSLBM開発は一つの通過点だ。この点について、中国海軍は「国際法と国際慣例に合致し、特定の国を標的としたものではない」としているが、共産党系メディア「環球時報」は発射されたミサイルが「巨浪(JL)3」である可能性に触れながら、太平洋へのSLBM発射は台湾統一に向けた決意表明であるとも解説した。
JL3の射程距離は1万キロ以上で、中国沿岸部から米国を攻撃することができる。昨年9月の軍事パレードで公開されたが、23年版の米国防総省「中国の軍事・安全保障に関する年次報告書」で晋級原潜に搭載されていると指摘されていた。
中国は24年に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を太平洋に向けて発射したのに続き、今回、SLBM発射を公表したことにより、仮に中国本土の核戦力が攻撃を受けて破壊されても海から反撃する「第2撃能力」を保有したことを示した。
米国を直接脅かす核戦力を陸と海で実戦運用できることを、あえてアピールしたのは政治的な狙いがあるとみていいだろう。環球時報は隠し立てなく「台湾統一の決意」に言及している。これはウクライナに軍事侵攻したロシアが、核攻撃の可能性を暗に示す核恫喝(どうかつ)によって北大西洋条約機構(NATO)軍の派兵の可能性を消したのと同じことを意味するだろう。
中国が香港に高度な自治を認めた「一国二制度」を骨抜きにし、強権的な弾圧によって民主派を排除した事態を、民主主義諸国は止めることができなかった。台湾を明日のウクライナにしてはならない。
民主諸国と緊密に連携を
NATOのルッテ事務総長は中国のSLBM発射について「中国を甘く見てはいけないことの証拠だ」と述べ、インド太平洋の地域情勢が欧州・大西洋地域の安全保障に密接に結び付いていると指摘した。米国務省のピゴット報道官は声明で「地域と世界にとって重大な懸念材料だ」と表明するとともに「同盟国に対する防衛上の責務を引き続き堅持する」と訴えた。
わが国もインド太平洋地域の安全保障の要として、米国はじめ民主主義諸国と緊密に連携し、自由を守る抑止力の強化に努めるべきだ。






