安倍晋三元首相が選挙演説中に凶弾に倒れて4年が経(た)った。混迷する国際情勢の中、その喪失の大きさが明らかになる一方で、国内的にはその遺志は確実に実を結びつつある。

自由社会守る強い信念
安倍氏は愛国政治家であったが、常に世界の中での日本の繁栄を考え、その大前提となる自由を守ろうとしてきた。愛国保守の理念と国際的な感覚、理想主義と現実主義のバランスを重視してきた。
安倍氏が提唱した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」や日米豪印の「クアッド」は、自由を守るための国際的な枠組みであった。覇権主義的な中国をにらんだ戦略だが、その根底に自由社会を守る強い信念があった。それは世界の政治家の中でも際立っていた。トランプ米大統領と親密な信頼関係を築き、日米関係をこれまでになく深化させた。常に自由世界の結束の重要性を認識して行動してきた。
米国と欧州諸国の間にかつてない隙間風が吹くようになり、その結束が揺らいでいる。日本は北大西洋条約機構(NATO)の一員ではないが、安倍氏であれば日本が米欧の仲介役となるために積極的に動いたのではないか。
安倍氏の遺志は高市早苗首相によって一つ一つ実現しつつある。高市首相は昨年、首相就任後の所信表明演説で安倍氏が好んだ言葉を引用する形で「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」と表明。FOIPについて「外交の柱として引き続き力強く推進し、時代に合わせて進化させていく」と宣言した。
モディ・インド首相との首脳会談でそれがはっきりと示された。日印は中国を念頭に、レアアース(希土類)をはじめとする重要鉱物の確保など経済安全保障分野での協力に関する共同文書を発表。海上自衛隊の艦艇に搭載されている通信アンテナのインドへの輸出でも基本合意した。高市首相は、安倍氏がモディ氏との間に築いた信頼関係を土台に、日印関係をさらに深化させた。
安倍氏の最大のレガシー(政治的遺産)は愛国保守の志だ。悲願であった「戦後レジームからの脱却」の柱である憲法改正の実現に向けた環境も整えられつつある。
安倍氏銃撃はテロだった。当初、政治家もメディアも山上徹也被告の犯行を「民主主義に対する重大な挑戦」と一斉に非難した。ところが山上被告が世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)に恨みを持っていたことが伝えられると、事件の本質は忘れ去られ、批判の矛先が家庭連合に変わってしまった。
その結果、家庭連合は宗教法人格を失った。これは信教の自由、法の下の平等を侵害するものであり、大きな禍根を残すことになった。司法は山上被告の犯行が「最も成功したテロ」になることを許したのである。
事件の真相を明らかに
奈良地裁は山上被告に求刑通り無期懲役の判決を下した。被告側はこれを不服として控訴した。控訴審で、闇に包まれた事件の真相とテロ事件の本質が明らかにされることを期待したい。






