高市早苗首相が訪印してモディ首相と会談した。日印関係を一層強化すべく、①「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を踏まえた戦略的連携の強化②エネルギーを含む経済安全保障③民間投資や先端技術を含むイノベーション協業による経済成長実現――の3点を中心に相互補完的な協力を推進することで一致した。

年内の2プラス2で合意
①では、年内の2プラス2(外務・防衛担当閣僚会合)実施や海洋安全保障の協力拡大②では、半導体など5分野のサプライチェーン(供給網)強靭(きょうじん)化③では、2兆円規模の対印民間投資などで合意した。
インドは長年中国と国境問題を抱えており、近年では中国の海洋進出にも警戒感を強めている。中国海軍は南シナ海や日本近海でも威圧的な行動を活発化させており、共同声明ではこうした中国の動きを念頭に、東シナ海・南シナ海情勢に深刻な懸念を表明。一方的な現状変更の試みに強く反対した。今回合意された共同訓練の深化や衛星を用いた海洋情報の共有、艦艇整備の協力などは、中国の脅威に対処し、インド太平洋地域の安全や海洋秩序の維持を確保するための重要な取り組みである。
両国は共に日米豪印の枠組み「クアッド」の構成国だが、トランプ米政権の高関税措置発動以来、米印の関係はぎくしゃくしている。トランプ大統領はクアッドへの関心が薄く、クアッド首脳会合開催のめどは立っていない。そうした中、高市首相の訪印で日印の戦略的連携が強化されたことは、クアッドの形骸化を防ぐ上でも大きな意義があった。
日印は中東情勢の影響を受けた原油価格の高騰やサプライチェーンの混乱、重要鉱物の確保などでも共通の懸念や関心を有している。経済安全保障の協力推進は、不安定な国際情勢に備えるとともに、恣意(しい)的な輸出制限など経済的威圧を強める中国に対抗するための政策だ。
さらに日印企業による投資や人工知能(AI)など先端技術分野の協力を進めることで、ウィンウィンの経済関係をもたらすことが期待される。インドには既に1400社以上の日系企業が進出しており、今後さらに成長が見込める市場としての期待値も高い。日中関係が悪化し、しかも少子高齢化で中国市場の縮小も予想される中、日本が世界最大の14億の人口を抱えるインドとの経済的な結び付きを強めるのは必然の流れである。
今回の高市首相訪印で日印の戦略的・経済的な関係は一層強まり、お互いが相手にとってなくてはならない国となりつつある。兄、妹と呼び合うなど首脳間の信頼関係も深まった。
民主陣営につなぎ留めよ
ただし注意すべき点もある。戦略的自律を掲げ全方位外交を展開するインドは、ロシアとの関係が深く、新興国グループ「BRICS」の一員でもある。さらに、新興・途上国「グローバルサウス」のリーダーを自認している。すべてが日本の思惑通りに動く国ではない。その限界をわきまえつつ、インドを自由民主の陣営につなぎ留めるための不断の努力が求められる。






